【オビ】イザナ殿下、元側近に用なんてないでしょう？part2 (ページ45)

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第６３話ページ45

風呂に入ったAを待ちながらさっきの話をぼんやりと思い出す。

「人ってどうやって愛せばいいんだっけ...か。」

ふとAの言葉が口からこぼれでた。

(俺はA嬢に気持ちを告げても良かったのか...？もし苦しめただけなのだとしたら。)

オビの葛藤など知る由もなく夕陽は綺麗に沈んでいく。

一方風呂の中にとりあえず逃げ込んだAはオビになんと返事をしようか悩んでいた。

(私の中での答えは決まってるんだよね...。)

「問題はなんて伝えればいいか、だよね。」

つい声に出してしまい、慌ててドアの外にいるオビに聞こえていないか確認する。

曇り硝子にうっすら透けて見えるシルエットは全く動いておらず聞こえていなかったようだと安心し、シャワーを浴びようと手を伸ばした。

よくよく考えてみれば自分は今オビとガラス一枚でしか区切られていない空間に無防備に立っているのだと気がついた。

一気に恥ずかしさが増して顔が熱くなる。少しでも顔の熱を冷まそうと冷たい水をひとしきり浴びた後、ドアの外にいるオビに声をかけた。

「オビ。今から出るから...その...。」

「ん？どうしたんだい？」

「しばらくそのドアの前から離れてほしい...です。」

言われて初めて自分は堂々とAが風呂に入っている間中そこに立っていたことに気がついた。

「ごめんごめん、すぐにどくよ。」

シャワーを浴び終わり普段着に着替えて出てきたAを見て何か言いかけてまた口を閉じる。

「なに。」

「いや、なんでもないです。」
自分では答えを聞くことなんて余裕だと思っていたが、案外そうでもないらしい。

(何を緊張しているんだか...、主の気持ちがちょっとわかった気がしないでもないなこりゃ。)

「明らかに今何か言いかけたじゃない。」

「うん、うん、はい、うん。」

「なんか変だよオビ。」

「え？そ、そんなことないですよ。」

「ふーん？まあいいや、で何か用事あったんじゃないの。」

自分から言わなきゃならない、そんな事はわかっているけれどもしかしたらオビから何か言ってくれるかと期待して、話を続けてみる。

「いや、大したことじゃないから。」

(俺いま絶対怪しまれてるよな、でもなかなか言えないもんなんだなこれが。)

「......。」

しばらく黙ったままの2人だったが沈黙を破ったのは意外にもAだった。

「...ねえオビ、この前の話。」

「へ？いやいやちょっと待ってください！？」

(究極にダサいぞ俺...。)