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第54話 ページ36

「どうって...その...。」

アトリが逆賊かどうか、そんなことを考えずに接しられたらと何度思ったことか。

「おーいアトリー。」

「あっ!はい!今行きます!!!」

他人の声が聞こえて手が緩んだ隙にアトリは駆け出していってしまった。


庭にひとり残され、なんともなしに下を向いた。アトリが座っていた場所に何かが光っている。

「なんだろこれ。...!!」

私が拾ったもの、それは紛れもなくリドの紋章が入った小さなピンズ。

(やっぱりリド...か。イザナ殿下の読みは当たりってわけだ。もし、これをイザナ殿下に、渡さなければ...。)

一瞬でもそんな考えが頭によぎった自分が情けない。

アトリが逆賊でなければ良いのにと思い続けてきたその気持ちを、首にさげた身分証明書を握ると同時に握りつぶす。

仕事に私情をはさんではいけない。



「失礼します、イザナ殿下。」

「Aか、久しぶりだね。Aから来るということは、なにか確証が得られたということか。」

「はい、アトリ...弓矢番の少年が落としていったと思われるリドの紋章が入ったピンズです。」

「そうか。」

「それから...。」
一瞬言おうかどうか躊躇った。けれど、イザナ殿下がゼンが傷つくのは見たくない。
アトリも同じなのだけれどもそこは封じ込める。

「明日から夜番になる、とも言っていました。」

私の言葉を聞いた時なぜかイザナ殿下はため息をついた。それも呆れたようなものではなく、悲しみをもった深いため息を。

私にはなんのため息かわからなかった。。

「わかった。明日は朝から私の部屋に来い。」

「了解しました。では、失礼させていただきます。」




一通り仕事を終え、廊下を通りかかった時に、向こうの方でゼンとミツヒデがなぜか座り込んでいるのがちらりと見えた。

きっと彼らには彼らなりの葛藤があるのだろう。




部屋のドアを閉め、これは仕事だ、と自分に言い聞かせる。そうでもしないと責任感と私情との間に挟まれて潰れてしまいそうだった。



だから私は自分の気持ちに気づかないふりをする。


空には今にも消えそうなか細い三日月が見えていた。

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設定タグ:赤髪の白雪姫 , オビ   
作品ジャンル:恋愛
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える@低浮上(プロフ) - ワンダーランド☆さん» わああありがとうございます!! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 452b3821d2 (このIDを非表示/違反報告)
ワンダーランド☆(プロフ) - える@低浮上さん» 嫌なわけがないです!!ぜひぜひよろしくお願いします!! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 56d0db472c (このIDを非表示/違反報告)
える@低浮上(プロフ) - 失礼します、あの、もしよかったらあなたの作品のスピンオフを書かせていただいてよろしいでしょうか……!! 嫌なら全然構いません! (2016年9月3日 22時) (レス) id: 452b3821d2 (このIDを非表示/違反報告)
ワンダーランド☆(プロフ) - えるさん» ありがとうございます!頑張りますねー! (2016年7月31日 16時) (レス) id: 56d0db472c (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - オビ好きなのですごいおいしく読みました!!更新まってます! (2016年7月30日 14時) (レス) id: 5e75a04cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ワンダーランド☆ | 作成日時:2015年12月16日 20時

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