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第53話 ページ35

「...あのさ。」

ついに沈黙に耐えられなくなったアトリが口を開いた。

「なに?」

「俺さ...実はぎ「待たせたな!!」」

アトリがハッとしたような顔をして、口元をおさえる。

「...待ってない帰れ。」

タイミングの悪いところでゼンが来た。さっきアトリは何を言おうとしていたのか、“ぎ“と聞こえた気がした。

きっとこの時の私は自分でも始末できない不甲斐ない感情にのまれていたのだろう。

「酷いなおい!せっかく俺が抜け出してきたっていうのに...。」

「抜け出してきた?仕事終わってないの?」

「終わらせてたら日が暮れちまうだろ!!」

「そんなにためてたんだ...。」

「お前がやってくれなくなったからだよ!」

「自分の仕事は自分でやれ。」

「やってたらアトリに会えなくなるだろうが!!」

「...そのことなんですけど、俺今度から夜番になるんです。だから...今みたいに日中この辺出歩くことが出来なくなるんで...。」

「今までみたいに昼間会えないってことか。」

「そうだな。」

「夜中でもたまに抜け出して来られますか?」

「俺の脱走能力なめるなって言っただろ。」


そのあとしばらくはゼンも一緒にいたが、やがて時間切れだといって帰っていった。

「...さっき。」

「ん?」

「何言おうとしてたの?ゼンのせいで聞きそびれた。」

「いや、何でもない!!大したことじゃねえから!」
焦ったように誤魔化すアトリを怪しく思ってしまう自分がいた。
仲良くなった相手を疑うことほど辛い事はない。

「...そっか。」

(俺はさっき自分が逆賊だって言おうとしていた。王子が来なかったら俺は言ってしまっていただろう。言っちゃだめだ、でも言えたらどれだけ楽か。もちろん仇を忘れたはずがない。今でも憎い、この手で討ち取ってやりたい。だけど...Aと出会ってから俺はおかしい。)

でも疑わなければ、それが私の仕事だから。

目の前でなぜか百面相をしているアトリにできれば使いたくなかった奥の手を使う。

「じゃあさ、私のことどう思ってる?」

鼻と鼻が触れそうなところまで近づきに行く。

「え...。」

アトリは驚いたのか後ずさりするが後ろにある木にぶつかり、逃げられない。

誰かが見たら誤解されそうな、私はアトリの上にほぼ馬乗り状態だった。

「前から聞きたかったんだけど、いつもゼンがいたから。」

「えっと...。」

顔を真っ赤にして焦るアトリを見て、さらに心が締め付けられる。
私は何をしているのだろう...。

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設定タグ:赤髪の白雪姫 , オビ   
作品ジャンル:恋愛
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える@低浮上(プロフ) - ワンダーランド☆さん» わああありがとうございます!! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 452b3821d2 (このIDを非表示/違反報告)
ワンダーランド☆(プロフ) - える@低浮上さん» 嫌なわけがないです!!ぜひぜひよろしくお願いします!! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 56d0db472c (このIDを非表示/違反報告)
える@低浮上(プロフ) - 失礼します、あの、もしよかったらあなたの作品のスピンオフを書かせていただいてよろしいでしょうか……!! 嫌なら全然構いません! (2016年9月3日 22時) (レス) id: 452b3821d2 (このIDを非表示/違反報告)
ワンダーランド☆(プロフ) - えるさん» ありがとうございます!頑張りますねー! (2016年7月31日 16時) (レス) id: 56d0db472c (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - オビ好きなのですごいおいしく読みました!!更新まってます! (2016年7月30日 14時) (レス) id: 5e75a04cfe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ワンダーランド☆ | 作成日時:2015年12月16日 20時

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