背中 ページ2
終わらない課題…部活でのミス…伸びない成績…迫られる進路…友達との喧嘩…
私は、数多のストレスや悩みに押し潰されそうになりながら、おぼつかない足取りで階段を下っていた。
「はぁ…もう疲れたよ…。」
ため息を吐いたら幸せが逃げていく。
そんなこと誰かが言っていた気がするけど…
…………………あっ
視界が傾く。落ちていく────────
…うっ
全身に衝撃が走る。
落ちたのか…私。いっそこのまま……
「お、おい！A！！大丈夫か！？」
通りすがりであろうケント先生の声だ。
私は、無いに等しい気力を振り絞りなんとか起き上がった。
「あぁ…ケント先生…すみません、大丈夫です。ちょっと足をくじいただけなので。…痛っ！」
激痛に思わず顔を歪める。
「あー！こらこら、無理しない！ほらA、背中乗って。俺が保健室までおんぶしてってあげるから。」
ケント先生は私の前に背中を向けてしゃがみこんだ。
「えっ？」
おんぶ…？ケント先生のおんぶ…？？
誰かに見られたら、という不安が過ぎった。
でもこれじゃあ歩けないし…
「あ…もしかして抱っこの方がよかった？」
暫しの沈黙。
「…へっ！？あっ、いやっ、おおおおんぶで結構ですっ…！！」
恥ずかしくて急いで背中に跳び乗る。
先生は私を背負い直し、何も言わずに保健室へと歩き出した。
先生の背中…あったかい…
温もりで心が癒されていく。
まるで、「悩みがあるなら話してごらん」と言っているような頼もしい背中だった。
この大きな背中なら、きっと、私のストレスを全て受け止めて優しく包み込んでくれる。
「俺は抱っこの方がよかったんだけどなぁ…」
呟くような小さな声。
私は聞こえなかった振りをして、少し熱くなった背中に顔をうずめたまま白衣をギュッと掴んだ。
声と勇気を絞り出す。
「先生、あのね─────────
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作者名：いざなみ | 作成日時：2018年2月9日 22時
