変わらぬ愛は夢現 ページ8
ポツリ、ポツリとアスファルトの色を変えていく。コンビニからでてきたサラリーマンとか、帰宅途中の高校生たちは慌てて傘を差す。あっという間にたくさんの色達が踊り始めた。
私は、どんよりと重くのしかかる空に潰れてしまいそうになった___
徐々に勢いを増す雨に危機感を覚えてコンビニへ入る。残り少ないビニール傘を手に取って、お金を払った。「ありがとーございましたー」なんてやる気のない店員を見て、お疲れ様ですと思いながら外へ向かう。
パチンッとワンタップ式の傘を開けば、少し遅れて私の頭の上でコンサートが始まった。そのリズムに心地良さを覚えてしまう。
ふと、思い出してスマートフォンを取り出す。表示されている時刻は18時6分。約束の時間まではあと20分弱。彼を待たせるのは悪い、と足元が濡れることを気にせずに私は駆け出した。
・
木製の年季の入ったドア。それを軽く押すとカランカラン、と軽快で乾いた音をたてる。少し奥で、待ってたよと言わんばかりの顔で彼はこちらを見た。
今の時間は18時28分。かなり健闘した方だと思う。おかげで待ち合わせ時刻前に到着出来た。
「待たせちゃってごめんね」
「雨が降ってたから、仕方ないよ」
デキる男だ、と散々思う。いつも待ち合わせには余裕をもって着いているようだし、車道側を自然と歩いてくれる。
「ご注文はお決まりですか?」
少しぎこちない話し方の店員さんが来て、そう訊ねられる。
「あー、っと……。コーヒーにクリームのせたやつ1つ」
「ウィンナーコーヒーですね」
あっさり訂正されてしまって、少し恥ずかしく思う。
かしこまりました、とその場を去っていく店員さんを横目に彼の方を向く。
手前には既にホットコーヒーが置かれていた。ホット、とは言ってもだいぶ冷めてしまっているようで彼がいつからここにいたのかはよく分からなかった。まぁ、先程ではないことは確かだ。
「洋服、濡れてるけど大丈夫?」
そう言われて、気づく。確かに最初のうちは傘をさしていなかったし、足元なんかは特に酷い。靴下まで水が染み込んできて不快感を覚える。
「足が汚れちゃったし、今日は出歩けないかな〜……」
新しい服は買ったばかりだし靴を買い換える程履き古していない。何より新しいものが汚れるかもしれないことが嫌だった。
「じゃあ、今日はここでゆっくり話そうか」
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