うまくいかない【東海オンエアりょう】 (ページ14)

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13．Side Ryo ページ14

Side りょう

「まさか喧嘩でもしましたか？」自分のせいで？と困った顔をしている彼の顔を見て自然と笑みが溢れる。

「いや、違うよ。俺が悪いんだ。俺がAの気持ちを理解できてないから…でも何も言ってもらえなくてお手上げ状態でさ。」カッコ悪いなぁ、俺。

「あの…りょうさんって、生まれも育ちも岡崎ですか？」

突然の質問にキョトンとしてしまう。

「え、そうだけど…。」

俺の返事にパッと彼が閃く。「多分、そこだと思います。」

何のことだかさっぱりわからない俺は、彼の言葉の続きを待つ。

「俺、転勤族なんですよね。転勤先で、そこが地元の女の子とも何度か付き合ったことがあるんですけど…。」

「さみしいんすよね。」ヘラッと切ない顔で彼が笑う。

「大好きな彼女のことを、自分よりも知ってる人が沢山いるわけじゃないですか。地元の集まりに誘ってもらうと、彼女から知りたかった話や、僕の知らない顔をして話す彼女を見るのって、こう…寂しいんすよ。寂しくて、少し悔しい。」

胸がざわつく。

「りょうさんはあのメンバーとめちゃくちゃ親密じゃないですか。友達の彼女だと言っても、女性もいる。りょうさんが、Aさんのコミュニティが広がればいいと思って行動してることはAさんもわかっていると思います。だからこそ、言えないんじゃないですかね？りょうさんの好意を踏み躙る気がして。」

彼の言う通りだった。Aは俺のスケジュールが突然あくことが多いため、いつも予定を入れず俺を優先してくれていた。

Aの交友関係を狭めてしまっていることに気付いていたが、俺を一番に考えてくれていることが嬉しくて、知らないふりをしていた。

そんな罪悪感もあり、少しでもAにとって気心が知れた相手が出来たらなと思い積極的に昔の友達を呼んでいた。

それが逆に彼女を孤独にさせていたことなんて、立場を置き換えて考えたら、すぐにわかることなのに。

(何やってんだか俺…)

後悔の波にさらわれそうになり、足元がぐらりと揺れる。

「りょうさん？大丈夫ですか？」

心配そうに見つめる彼に「大丈夫、教えてくれてありがとう。」とお礼をし別れた。

ちょうど帰ってきた店員さんからカメラを受け取り、メンバーの元へ戻る。

一刻でも早く仕事を終わらせて、彼女の元へ行くと決意しながら。