身内贔屓 (ページ3)

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事務所の方と少し顔を合わせて経緯を説明し、それが終わると早々と事務所を後にして兄貴の家に向かうことになった。

兄貴の派手な車の助手席に乗る。

車から見る東京の景色は新鮮で全部がキラキラして見えて、心躍らせる私を見て兄貴は屈託のない顔で笑う。

信号が赤になる。
信号待ちでぼんやりと外を眺めていると、兄貴が視線を脇道にあるコンビニへと向けた。

「なあA、ちょっとコンビニ寄ってもええ？」

「え、いーけどなんで？」

「たばこ吸いたい」

「ここで吸ったらええやん」

「Aの体に悪いやろ」

体に悪い。その言葉に肝を抜いた。
そこまで私のことを考えてくれているのか、と思ったのと同時に、これから生活していく上で兄貴にとって我慢を強いられることが沢山あるのではないかと、私と暮らすことでストレスが増えるのではないかという考えが脳裏をよぎる。

コンビニの前で兄貴がタバコを吸っているのを横目にスマホをいじる。

なんかやりづらい。
兄貴も私もお互いに気を使い合ってる。
こんなのはじめは良くてもこれから暮らしてく途中で絶対にキツくなる。

どーしたものか。

まあ悩んだところで無駄か。こういうのは案外流れに身を任せた方がうまくいくやつ。

そう自分に言い聞かせてタバコを吸い終わった兄貴と共に車に乗った。