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家につくと兄貴は鍵を開ける。
最近引っ越したばかりであんまり片付いてないけど、と通された部屋は兄貴らしい。
「正面の部屋がリビングでキッチンもそこにある。繋がっとる。あっちが洗面所と風呂場、そこの扉がトイレ。手前の部屋が俺の部屋で、その向こうがお前の部屋」
一気に説明されたので覚えづらいけど聞き返すのも癪なので頭に詰め込む。
とりあえずと持ってきた荷物を私の部屋に運ぶ。
ドアを開ける。視界に入った部屋の内装を見て私は思わず声を出してしまった。
「うわ！！まって兄貴！！」
ベッドと、机と、棚。カーペットもカーテンも小物も装飾も全部わたしの趣味。
本当に私の部屋のようで。
兄貴、すごい
「おっきい声出してなんやねん」
そう言いながらも照れくさそうな顔をした兄貴が部屋の扉前で未だ固まる私の後ろから覗き込むようにして私の部屋を見渡す。
「いや、兄貴が用意してくれたこの部屋めちゃくちゃ私の趣味。兄貴最高なんやけど」
「え、ほんま？俺が好きなような感じにしただけなんやけど」
「え？なら私らめちゃくちゃ気合うやん」
「せやな」
せやな。珍しく兄貴が肯定した。
少し驚いて振り向くと、兄貴と目が合う。
そういえば、東京にきて、今日初めて目が合った。
「‥‥ちょ、なんやねん笑笑」
「いや笑笑なんか笑笑笑」
それを皮切りに、二人で顔を見合わせて笑った。
「なんで急に笑うねん！！！！笑笑」
「いや兄貴も笑っとるやん！！！」
そのとき、なんか、おもろいなと思った。さっきまでしていた車の中で気の使い合いが馬鹿みたいに思えてきて、こっちに来てからお互いどこか距離を保っていたのがあほらしく思えた。
変な話だけどあ、こいつ、兄貴だったわ、と思って。
兄貴とは年に数回会う程度で、血の繋がりはあれど私だけ家族の中でも歳が離れていて、それもあってかあまり世間一般的な妹としてフランクに扱われることもなかった。
愛されているのけどそれがずっと少し寂しくて、私もお兄ちゃんみたいに兄貴とフランクに関わって色々なことをしたいとずっと思っていた。
でも、思っていたけど。
なんか、それもいまならできそうな気がした。し、変に壁をつくる必要もないことに気がつく。
「なーな、兄貴。私ら歳は離れとるけど、兄弟。やから歳離れた妹やから、兄やから、とかやめへん？これから一緒に、住んでくんやしそういう意味でもそっちのほうがええ。」
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作成日時：2022年2月6日 22時
