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何も知らない ページ40

そうだ。私はまだ一度も彼の口から彼の気持ちを聞いたことなどない。
彼の口から聞くまでは私に惚れている確証などない。
彼は整理がついたら話すと言った。ならまだ愛や恋の類の感情と決まった訳では無い。
答えを出すのは神威だ。

しかしまた子さんは声を荒らげる。


「んなこと言ったって今の反応見たら分かるじゃないっスか!!あんな露骨なの!!」

「……露骨だったか?」


私にはよく分からない。神威の先程の行動の意味も、また子さんがこんなに怒ってる訳も。


「追えよ、A」


口を開いたのは殴られ続けてボロボロの八田だ。


「今追わないとAは後悔する。俺はAが後悔するくらいなら他の男を追う方がマシだ」

「うるさい喋るな。今また子さんと話しているんだ」

「A俺の事、実はあんまり好きじゃないだろ」

「好きじゃないんじゃない。気持ちが悪いと思っているんだ」


だってストーカーだし。ストーカーに抱く感情なんて気持ち悪い以外にあるのか。


「んな話はいいんだよ!!追え!!神威を!!Aはアイツに惚れてる!!俺が保証する!!」

「はた迷惑な保証だな」

「今はそう思ってくれてもいい!!だから頼む!!今追わなきゃ――――俺は一生お前のストーカーをする」



うわ。

気持ち悪いのきの字まで出たところで突然阿伏兎さんが口を開いた。


「頼む、追ってやってくれ」


その目には縋るようなものすらあった。
………仕方がない。


「八田。さっきの言葉、忘れるなよ」


私は走り出した。あては無かったが、一生ストーカーされるのは困る。

銀魂高校、夜兎工、ファストフード店、ファミレス―――思い当たるところを巡ってみる。
けれどそれは私と会うために行った場所で。

私は普段、神威が何処でどんな放課後を送っているのか知らない。
仲間達とどんな会話をしているのか知らない。
趣味が何か、どんな食べ物が好きか、休日は何をしているのか、知らない。

知らないことだらけだ。
それを不快に思うのは、きっと今探すのに不便だからだ。


もう日が見えない。
家にでも帰ったのだろうか。私は彼の家が何処にあるのか分からないから家に居られちゃどうしようもないな。


けれどそれは突然目に入った。

ある小さな公園。一つだけの明かり。
それに照らされたブランコで、その赤い三つ編みは小さく揺れていた。

さっき抱き寄せられた時はあんなに大きく感じた肩が今は小さく見えるのはきっと距離だけのせいじゃない。

そうして愚かな私はようやく気がついたのだ。
私が神威のことを何も知らないのは、私が知ろうとしなかったからだと。

君の口から聞きたい→←何だじゃないだろ



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mire(プロフ) - お二方ともコメントありがとうございます!!すぐに返せなくてごめんなさい・・・最後までこの物語にお付き合いいただけると幸いです。 (2020年6月4日 15時) (レス) id: 6258a992b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年5月7日 18時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
まほ - とても面白いです! 頑張ってください! (2020年4月21日 0時) (レス) id: 1d89b9509f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/  
作成日時:2020年4月7日 21時

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