どうして ページ36
「また子……さん」
驚きのあまり言葉に詰まってしまった。
そんな私を見て、彼女は安堵したように頬を緩ませた。
「さんは要らないっスよ。A」
八田の周りの不良達がどよめき出す。また子さんのことを知っているようだ。
「なんで、高杉の取り巻きがこんな所に…!?」
「フン。お前ら、私の友達にこんなことして、私が出てこないとでも思ってたんスか?生憎、そんな腐った人間じゃ無いんスよ」
「そうじゃない!!これは俺らと夜兎工の喧嘩だ。なんで関係ない銀魂校のお前が知ってんだ!!」
「そりゃあ、夜兎工のある男から情報提供を求められたんスよ。あんたらが普段使っている場所を教えろってね」
「ある男……?」
また子さんは背後に向かって「何してんスか」と声をかけた。
その声に反応したのは逆光で素顔の隠された男だ。こちらへ歩みを進める度に落とされた影は消えてゆく。露わになったその素顔は。
「神威……」
どうしてここに。
なんでここに。
絶対来るはずがないのに。阿伏兎さんが全て解決して、もう私達の人生は二度と交わらないはずだったのに。
まさかまた子さん伝いでここまでたどり着くなんて。
「……どうして、来てしまったんだ」
不思議と笑みが零れた。安心したからというよりは、彼の張り付いたような笑みの裏に妙な焦りの感情を感じたのがひどくおかしかったからだ。
「なんだよ、約束どおり助けにきてやったのに。何か不満?」
「あれは約束だったのか」
「んー宣言の方が近かったかな」
「そうかもな」
こんな状況なのにいつもの調子で話しかけてくるもんだから、こっちだって拍子抜けだ。
さっきまで他の人間に敵意むき出しで話していたから、尚更。
「じゃ、チャッチャと終わらせちゃおうか」そう言った神威に腕を引き寄せられる。
肩を抱かれて私は神威の胸の中に収まった。
彼は涼しい顔で八田を吹っ飛ばした。私が初めて彼に恐怖心を抱いたあの日のように。
近くで彼の薄い色素のまつ毛の妙に長いのを気にしていたため、言うのが遅れてしまった。
「神威、今回の首謀者は八田ではない」
「え」
のびた八田だけが、そこに虚しく転がっていた。
人質である私が奪われたことにより勝ち目を失った八田の仲間たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。八田の事も回収しようと引きずっている不良が何人かいたが、「そいつは置いといて。ちょっと話聞くから」と神威に言われてその不良達も慌てて逃げて行った。
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mire(プロフ) - お二方ともコメントありがとうございます！！すぐに返せなくてごめんなさい・・・最後までこの物語にお付き合いいただけると幸いです。 (2020年6月4日 15時) (
レス) id: 6258a992b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すごく面白いです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月7日 18時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
まほ - とても面白いです！ 頑張ってください！ (2020年4月21日 0時) (レス) id: 1d89b9509f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mire | 作者ホームページ：http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時：2020年4月7日 21時
