久しぶり ページ23
「番長は強くなきゃいけねェ。女の影なんて、弱点晒してるようなもんだ」
「……正直、言いたいことは山のようにある。だが、私には彼に対する執着心など微塵も無いから黙って聞き入れてやろう」
「執着心があった場合どうしてたんだ?」
「その場合は恐喝として然るべき対処をしていた」
「全く。末恐ろしいねェ」
面白くない、納得できない、というのは割と本気で思っている。
しかし、神威個人の感情より優先しなければならないことが、彼らのコミュニティには存在するのだろう。
それを私の存在が妨げるというのなら、いや、そうでなくても目的が達成されれば私は静かに離れるつもりだ。
「私は、目的さえ達成されれば何でもいい。ただそれすら邪魔するなら、たとえ君に対してでも容赦はしない」
「へいへい。ストーカーの完全撃退までは俺も目を瞑らァ」
そう言って阿伏兎さんは店内に戻ろうと歩き始める。
私もそれに続こうとしたが、ふと、気配を感じて立ち止まる。
振り返る私に「どうした」と阿伏兎さんの声。
「……いや、先に戻っていてくれ」
阿伏兎さんは首を傾げつつも1人で店内に戻った。
さてと。
「久しいな。付きまといはなくなったとばかり思っていたが、ビビって出てこれなくなっただけか」
「き、気付いてたのかよ」
「いや、今気付いた」
店の前の植え込みからおずおずと顔を出したのはストーカーの八田だ。
「なんだよ。そっちから話しかけてくるんて。彼氏には飽きたか」
「まさか。ところでさっきの話は盗み聞きでもしたか?」
「え、いや俺そんなに耳良くねェし」
「なら良いんだが」
危うくバレるところだったな。まぁバレたところで、この様子じゃあ神威がそばにいれば近付いてこられないんだろうけど。
「なぁ、俺アイツについて色々調べたんだよ。やめといた方がいいだろ、絶対」
「今更彼の正体を知ったのか。先日の君はただの小柄な男としか思ってなかったみたいだが、それを知っていれば痛い思いはしなかったかもな」
「相手はあの夜兎工の番長だぞ。あの血も涙もない集団の頭だ」
「そうだな。けれど私が好きなのは彼で彼も私も愛している」
と、いうことになっている。
自分で言うのも少々気持ち悪さがあるが、コレを騙すためなら目を瞑ろう。
「……今は盲目になってるだけだ。いつか後悔する。そうなる前に……俺がお前を助けねェと」
出来ないよ。君には。
そう返す前に「じゃあな!」と走り去ってしまった。
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mire(プロフ) - お二方ともコメントありがとうございます！！すぐに返せなくてごめんなさい・・・最後までこの物語にお付き合いいただけると幸いです。 (2020年6月4日 15時) (
レス) id: 6258a992b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すごく面白いです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月7日 18時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
まほ - とても面白いです！ 頑張ってください！ (2020年4月21日 0時) (レス) id: 1d89b9509f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mire | 作者ホームページ：http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時：2020年4月7日 21時
