ありえない ページ22
「で、何の用なんだ」
店の扉を閉めるや否やそういう私に阿伏兎さんは苦笑いを見せた。
「さすがに鋭ェな。番長が気に入るだけはある」
「先ほども茶髪の男に似たようなことを言われたが、君が言うのはおかしいだろう。君は私達の関係が私の目的達成のための仮初のものであると知っているだろう。あれは全て皆を欺くための演技だと、知っているはずだが」
「……嬢ちゃん、鈍感すぎるのはモテないぜ」
「なんだ。どういう意味だ」
「番長は、本音を隠して建前を言うのはあんまり得意じゃねェ。やりたくないことをやるのも嫌いだ」
「何が言いたい」
じれったくなって厳しい声を向ける。
阿伏兎さんはため息を一つついてから心を決めたように口を開いた。
「単刀直入に言わせてもらう。番長がアンタに惚れかけてやがる」
「は」
い、いや。無いだろう。ありえない。
だって私達は条件付きの契約交際をしていた、はずだ。私の記憶では。
それがどうして……
「ここ最近、番長は楽しそうにアンタに会いに行く。他の誰と付き合っているときにも見せなかった表情でアンタと話す。……おそらく本人は気付いていないが」
「き、君の勘違いである可能性はないのか?だって、私は彼に好かれるような言動をしたことは一切ないんだぞ」
「舐めないでくれねェか。俺ァ3年も番長と云業と夜兎工三羽烏なんて呼ばれて頭張ってんだ……勘違いなんてするわけねェ」
仮に勘違いじゃなかったとしても、惚れかけていて、だったらなんだというんだ。
その感情をどうするのかなんてのは、神威が決めることで、それを受け入れるかどうかは私が決めることで。
阿伏兎さんが決めることではないはずなのに。
「で、私にどうして欲しいと言うんだ。まさか神威とはもう会うなって?」
「急にそんなこと言わねェさ。だが、目的が果たせたら、それきりにしてほしい」
「私から彼から離れろと。例え彼が気持ちに気付いたとしても」
「そうだ」
「いささか過干渉すぎないか。君は友人の色恋に口出しをする気か?」
「友人じゃねェ。番長だ。アイツは俺達のトップであり象徴でなきゃいけねェ」
なんだか先程、同じような話を聞いた気がする。
なんだろうな、さっきから。
知らない文化だから、はなから理解できるだなんて思ってはいないが、なんだか言いようのない感情を感じる。
「つまり、神威が『強い番長』であるために私の存在が邪魔だと言いたいんだな」
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mire(プロフ) - お二方ともコメントありがとうございます!!すぐに返せなくてごめんなさい・・・最後までこの物語にお付き合いいただけると幸いです。 (2020年6月4日 15時) (レス) id: 6258a992b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年5月7日 18時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
まほ - とても面白いです! 頑張ってください! (2020年4月21日 0時) (レス) id: 1d89b9509f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年4月7日 21時