呼び捨てで ページ16
「よっ」
神威さんは校門で待っていた。そういえばどこで会うとか言われてなかった。
にしても、二日くらい前の私の言葉を彼は聞いてなかったのか?
「ここで待つのは良くないと私は言ったはずだが」
「わぁ、初手からキレてるね」
「私は簡単なことを二度も言うのは嫌いだ。よっぽどの理由があれば別だが」
「そうだな理由か……」
そう言って神威さんはおもむろに近づいてきた。
身長差を埋めるように屈んで顔を覗き込んできた。
「昼に、元気なかったでしょ」
「いや、体調は万全だったが」
「Aは本当にズレてるね。意外と天然?」
「違う」
「早いなぁ。体調が良いのは本当らしい」
神威さんは苦笑いしながら「昼休みに送れば、いつもならすぐに返信くれるのに。今日はそうじゃなかったから」と続ける。
そういえば既読はつけたが返信はしていない。けれど、そんなことで元気が無いだなんて言われても。
「ま、何にもないならそれでいいや。じゃあ行こうか」
「今日はどうするんだ」
「今日はちょっと俺に任せてみてよ」
「君に?なにかプランがあるのか?」
「まあまあ」
なんだまあまあって。はっきり言え。
ほら、と手を引かれる。ナチュラルに手を繋いでくる。
昨日、自身のことをモテると言ったあとに話題を変えていたので「あ、たいしたことないのか」と思っていたが、この女性の扱いを見るにそうでもないのかもしれない。
ここ数日で彼が一切信用できない訳ではないことも判明したし、とりあえず任せてみることとする。
で、連れてこられたのは。
「なぜ神威さんの学校なんだ?」
夜兎工業高校の校門前だ。うちとは違いやはり物々しさがある。
「だって仲間を紹介するって言ったろ?」
「あぁ、確かにそんなことを言っていたな」
それにしても早すぎると思うがな。脊髄で行動しているのか彼は。
呆れる私に、「そうだ」と神威さんは人差し指を立てる。
「今日から呼び捨てで呼んでよ」
「何故だ」
「だって付き合ってるんだぜ?いたって自然だろ」
「さん付けのままでもいいじゃないか」
「俺の仲間はきっと怪しむ。ね、いい機会だし」
「……条件付きの偽彼氏にしては本格的にやりすぎなんじゃないのか」
「俺だけ呼び捨てだとフェアじゃない感じあるだろ?」
「無い」
「ええ〜」
神威さんより先に私が夜兎工業高校の敷地を踏む。校門を越えずに立ったままの神威さんに振り返って「どうしたんだ」と声をかける。
「Aって本当に度胸あるよね」
「なに嬉しそうにしているんだ気味が悪い……」
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mire(プロフ) - お二方ともコメントありがとうございます!!すぐに返せなくてごめんなさい・・・最後までこの物語にお付き合いいただけると幸いです。 (2020年6月4日 15時) (レス) id: 6258a992b7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年5月7日 18時) (レス) id: 647e80459a (このIDを非表示/違反報告)
まほ - とても面白いです! 頑張ってください! (2020年4月21日 0時) (レス) id: 1d89b9509f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年4月7日 21時