03:絶対に約束【鳴上嵐】 ページ3
.
私たちカップルには、ひとつだけ決まりがある。
これだけは守ろうねと言って、一番最初に決めた約束。
約束というには難易度の低いもの。
難しくなくても、今まで一度だって約束を破ったことはない。
その約束というのは。
「嵐ちゃん、」
「なぁに?」
「抱きついてもいい?」
「あら、甘えん坊さん? もっちろんいいわよォ」
恋人らしいことをするときは、きちんと事前に報告すること。
キスもそうだけど、ハグもそう。
手をつなぐときもたまに報告しなければならない。
衝動的にしたくなったら我慢。これ鉄則。
「Aちゃん、苺の香りするわね?」
「そ。香水つけてみた」
「ああ…誕生日に泉ちゃんからもらったやつかしら?」
「ビンゴ〜」
頭から背中にかけて、丁寧にゆっくりと撫でられる。
それが気持ちよくてもっとピッタリとくっつけば、
嵐ちゃんは照れたのか頬ずりをしてきた。
「髪まで巻いちゃって…。いったい誰のためかしらァ」
「知ってるでしょ?」
「え〜? んふふ、わからないわねェ?」
嵐ちゃんの吐息が耳にかかってくすぐったい。
もぞもぞと肩をすくめれば、嵐ちゃんは嬉しそうに頬を染めて笑う。
彼のその可愛い笑顔に釣られて、私も笑顔がこぼれた。
__キスとかできなくっても、ハグみたいに些細なことだけで私幸せだ。
だいすきでだいすきで仕方ない。
ちゃんと好きって伝わってたらいいな。
そう思っていたら、一瞬視界が真っ暗になった。
唇にふわっとした感覚がその一瞬のあいだに乗って、すぐ離れた。
「…あ、え?」
「? …あ、報告忘れてたわね。ごめんなさい…♪」
くすっといたずらっ子のように笑う嵐ちゃんは、
余裕そうに見えてその実耳は真っ赤っかで。
ほっぺも赤くて、すごく幸せそうな表情を浮かべている。
今まで一度も破ったことなかったのに。
絶対破っちゃダメって約束したのに。
「…ばかっ」
「ごめんなさいって」
約束を破られたはずなのに、
なぜか私の心臓はいつもよりドキドキしていて。
悲しみなんてどこにもなく、ただ嬉しさと幸福感に満たされている。
「怒っちゃったかしら」
「……二度と破っちゃだめだからね?」
「んー、しょうがないわね」
じゃないと、私の心臓がもたないんだから。
.
04:私を溶かして【瀬名泉】→←02:あまぐるしい目覚め【朔間凛月】
172人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ - こんにちは!レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです!これからも頑張ってください! (2019年6月27日 13時) (レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (2019年6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します!レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います!応援してるので頑張ってください! (2019年6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです!更新いつもありがとうございます…!これからも頑張ってください!! (2019年5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:adora | 作者ホームページ:
作成日時:2019年4月24日 0時