11：キューピッドは卵焼き【鳴上嵐】 ページ11
.
私が好きになったのは、オネエさんだった。
「あらぁ、今日の卵焼きも焦げちゃってるわねぇ」
「うっ…こう見えて頑張ったほうだよ…？」
「知ってる知ってる。今日も一口、いいかしら？」
「ん、どうぞ」
モデル時代に彼を知り、そこから惹かれていったのだが、
この学校に転校してきて初めて知った。
もうモデルも辞め、彼との接点がなくなったと嘆いていた私に、追い打ちをかけたのだ。
当然ながら嵐くんは私なんて眼中になく、
メガネをかけたクールでスマートそうな椚先生に夢中だった。
「…珍しい、だし巻き玉子？」
「もどきだけどね。たまには趣向を変えようかなぁって」
「あなたってほんと、味付けだけは天才的なんだから」
せめてものアピール材料はお弁当の具材、卵焼き。
昔から卵焼きを上手く作れないのが幸いで、彼は毎回味見役をかってでてくれる。
いつも甘さは控えめだったり、たっぷりだったり。
その日の気分次第で変化して、毎日同じ甘さであることはない。
そして今日はだし巻き玉子。
ふわふわにしたかったのに少し焦げちゃった。
でも味はいいから満足なんだ。
「アタシの卵焼きも食べる？」
「えっ食べたい」
「いいわよぉ。はい、あーん」
差し出される箸に遠慮なくかぶりつけば、
「あーん、可愛い〜！」なんて身悶えするからちょっとキモい。
「この甘さ好き、上手だね嵐くん」
「卵焼きは男のハートを捉える大事な具材だからねん」
「へ〜え」
「じゃあ、そろそろ嵐くんのハートも捉えられちゃっていいんじゃないですかね」
なんて、口に出すつもりじゃなかったのに。
皮肉めいて言ってしまった私はとことん可愛くない。
せめて言うんだったら、もっとすねたみたいに言えば可愛いのに。
ああ、やってしまった。
ちらっと彼を伺うと、耳に届いてなかったのか普通にお弁当を食べている。
これで良かったような、良くなかったような。
私は結果的に、またチャンスを失ったわけだ。
(つくづく報われない恋だよね〜)
凛月くんみたいにのんきに考えていると、嵐くんが一度箸を止めて笑顔でこう言った。
「好きな人のために頑張る子は、可愛くて好きよ、アタシ」
(……え？)
私がポカンとしている間にまた食事を再開する嵐くん。
なんだ、聞こえてるんじゃん。
それって期待していいってこと？
例えお世辞だとしてももうどうだっていいんだ。
＿＿ああ、明日も張り切って卵焼き作らなきゃ。
.
12：とりこ【月永レオ】→←10：いちごみたいに甘酸っぱい【瀬名泉】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 172人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くるみ - こんにちは！レオくんの話すごく切なかったです。幸せな話もまた読みたいです！これからも頑張ってください！ (2019年6月27日 13時) (
レス) id: 1520c09c44 (このIDを非表示/違反報告)
さゆな(プロフ) - レオのアンドロイド切ない… (2019年6月25日 20時) (レス) id: a613cbb65f (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 初コメ失礼します！レオくんのケーキとフォークの話がとても切なくて少し悲しい気持ちになりました。読み手をそういう気持ちにさせられるってすごいと思います！応援してるので頑張ってください！ (2019年6月3日 22時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - adoraさんの書くせないず可愛くて大好きです！更新いつもありがとうございます…！これからも頑張ってください！！ (2019年5月21日 6時) (レス) id: bc4ed3887c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：adora | 作者ホームページ：
作成日時：2019年4月24日 0時
