No.3『過去1=出会い:荼毘』 ページ5
荼毘とはじめて出会ったその日、Aはある理由から急いでいた。
「どいてください。急いでるんです。あたし」
「そう言われて、ああハイ、そうですかって通すわけないだろ」
薄暗い路地裏。時間短縮のために通ろうとしたそこでAはチンピラに絡まれ、足止めを喰らってしまった。
「邪魔です。通してください」
「そういうわけにはいかないって言ってんだろ！生意気な口聞きやがって」
チンピラがAに手を出そうとした、まさにそのときだった。
赤黒い色の炎が後ろから音もなく迫り、あっという間にチンピラを焼き、炭へと化してしまう。
Aは突然のことに呆然とするしかなかった。
自然と足の力が抜け、地面にへたりと座り込む。
これが、Aと荼毘の出会いだった。
腰をぬかしているAにその男は近寄ってきた。
チンピラを消炭にした男、そう、荼毘はその炭を気にする様子もなく、遠慮容赦なく踏み潰しAの方に近寄ってきた。
「測野A。個性『推測測定』雄英体育祭本戦出場。しかし今年普通科を卒業予定。……絵に描いたような劣等生だな」
「……あたしは確かに測野Aですが。あなたは？」
少し鈍いAでも、自分がどうやら目の前にいるツギハギ痕のある男に馬鹿にされているであろうことと、自分が話しかけられていることはわかった。
「『ヴィラン連合』の荼毘って言えばわかるか？」
「あんたがこれからの『定期報告』の相手なんだ……」
面倒そうな相手になったな、とAは思った。
しかし、しょうのないことである。
Aがどうこうできることではない。
諦め、目の前の男に伝えるべきことを報告していく。
Aは内通者だった。個性を使って雄英にいる人間の力を計り、連合へ伝える。
「……了解。報告ご苦労さん」
「オールフォーワンと死柄木さんに宜しく」
Aは一通り報告を終えると、すぐにその場を立ち去った。
Aの頭から、ヴィラン連合の荼毘という存在は日の光に溢れた大通りに出たときにはすっかり消え失せていた。
No.4 『夜のデート:荼毘』続き→←No.2『夜のデート:荼毘』
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作者名：パンプキン | 作者ホームページ：http://uranai.
作成日時：2018年1月8日 17時
