No.18『到着』 ページ21
黒霧の言葉にトガは微笑んだ。
これから、Aがここに来ることがわかったからだ。
「まだですかねえ、Aちゃんが来るのは」
そう言いながら、落ち着かない様子でアジトの中を歩き回るトガを死柄木は睨む。
「……うるさい、もう少しで来るから静かにしてろ気狂い」
「ヒドイですよー、弔くん」
自分の言葉に、ぷくりと頬を膨らませただけで、トガが静かになる様子はない。
そんな自分の言うことを聞かないトガの様子を顔についている『手』越しに死柄木は確認し、溜め息をついた。
(ここの連中はイカれてんのはいいが煩さ過ぎる)
「あ、そういえばせっかくAちゃん来るのに荼毘さんいないですねえ」
トガの言葉に実は何も知らなかった死柄木は動揺する。
(あいつらそういう『関係』だったのか？)
と、死柄木の動揺にトガは目ざとく気づき、その気はないものの、死柄木を苛つかせるいらない言葉を発する。
「あれえ、知らなかったんですか？弔くん。知らないのはあの人くらいだと思ってましたよ」
トガの言う『あの人』とは、鋭いようで鈍く、行動に一貫性を持っていないトゥワイスのことである。
トガに、よりによって、トゥワイスと同じ扱いをされたことに腹をたてた死柄木が、いつものように首をかきむしろうとしたところで、黒霧の個性……ワープゲートが出現した。
「よし、到着！ってうわっ、ここ暗いなあ」
Aがさっきまでいた廃ビル程ではないもののほんの少しの照明しかないアジトの中は薄暗い。
「Aちゃん！お久しぶりです」
「久しぶり！トガちゃん！」
女性陣二人が抱きあう光景を見ながら、死柄木はどう口を挟もうか悩む。
(もしかしてAは……)
今、トガと抱きあっているように荼毘ともそんなことをしたのだろうか？
そんな疑問が死柄木の頭の中をよぎる。
しかし、『手』があるおかげか、二人とも死柄木の赤くなった顔には気づかれていないようだ。
「Aさん。報告を」
「ああ、はい。すみません」
黒霧に促され、トガと抱きあうのをAはやめ、いつものように警察内部の動向などを報告をしていく
と、そこまではいつも通りだったのだが……
「よし、報告終わりました！じゃあトガちゃん、あたしと一緒にお酒を飲もう！！」
「いいですよ。でもお酒なんてここにはありませんよ」
「いや、ある！」
腰に手をあて、自慢げにAは大量の酒の瓶(ワイン、焼酎、ビールなどなど)とつまみまで、鞄の中から取り出して意気揚々と掲げてみせたのだった。
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作者名：パンプキン | 作者ホームページ：http://uranai.
作成日時：2018年1月8日 17時
