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正直に言って、化粧も香水もあまり好ましくない。正確には化粧をした自分の事が好きでは無い。
今日も平和でありますように、と自分が所属している組織が一体何なのかもう一度考えろ、と誰かに言われそうな事を願っていたというのに。
その願いは叶わなかったようで。
「いい香水だ。もしかして私の為につけてきてくれたのかい?よく見たら口紅もいつもと違う色だね、よく似合っているよ」
まるでそういう風に作られたかのように、なんの戸惑いも無く彼の口から紡がれるお褒めの言葉は一切嬉しくなかった。
私の事を観察し終えた太宰君は備え付けの椅子にどっかりと腰掛ける。
これは私が帰るまで出ていかないパターンに入ってしまったようだ。
「数日来ない間に何があったのだい?会えなくて寂しかった、なんて事は残念ながら無いようだ」
このままでは単に彼の好奇心を煽っただけになってしまう。
彼が普段相手にしているような女を演じなくてはいけない。私が彼に本当に惚れてしまったと思わせればきっと、飽きてしまだろうから。
「・・・さ、みしかったです」
「・・・・・・・・え?」
「太宰君が、次いつ来てくれるのかと待ち遠しにしていました」
胸の開いた服に足を露出させたタイトなスカート。派手な化粧にキツめの香水。
貴方が好きだと言っているようなセリフ。
顔を少し伏せて上目遣いで太宰君の様子を見た。
「私を弄んで楽しいかい?それともそれも中也から聞いたのか、随分甘く見てくれたものだ」
やってしまった、と本能が感じ取った。
背筋が凍りつくような視線を向けられてはじめて彼を怒らせたのだと気が付いた。
けれど、理解できない。どうして彼が怒るのか理解が出来ない。
先に私を弄ぼうとしたのは貴方のほうじゃない。
それに付き合ってあげようとした、つまり私が折れて貴方の遊びに少しの間付き合えばすぐに飽きるだろうと思ったから。
「どうして・・・太宰君は・・・・・・」
私を好きだと言ってからかって遊びたいだけでしょう。
「私が君を好いているから、そんな冗談も許されると思ったかい?」
椅子から立ち上がった太宰君はゆらりと私の方へ歩み寄る。その姿があまりにも恐ろしくて、私の身体は固まってしまった。
太宰君の、彼の唇が私の耳にあと少しで触れるという所まで近付く。
「冗談で済むと本気で思っているのかい」
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柚子豆腐(プロフ) - みなづきさん» コメントありがとうございま!文章を褒めて頂けるのはほんとにめっちゃ嬉しいです!!より楽しんで頂けるよう頑張ります!! (2021年3月10日 4時) (レス) id: 63b1aa4dbe (このIDを非表示/違反報告)
みなづき(プロフ) - 死ぬほど好きです!!!文章が綺麗で、キャラクターとしても太宰がひたむきというか、原作のままなのがもう好きすぎて、、100億回くらい10点押したいです。続き楽しみに待ってます! (2021年3月9日 22時) (レス) id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2021年2月25日 4時