わざと ページ12
「と言うか、私のせいだなんてよくも白々しく言えたものだね。まるで本当に私が悪いみたいじゃないか」
何人もの女性の人生をめちゃくちゃにしてきたような、信じられない程の綺麗な顔で太宰君は笑って、私が悪いのだと見えない指をさした。
「私が君を誘ったから、私が中也にバラしたから、私が君たちの仲をかき乱したから、私が悪いなんて言いがかりも甚だしい。君が誘いに乗ったんじゃないか」
太宰君の笑顔はまるでいじめっ子のような顔をしている。
顔だけじゃなくて、言葉のひとつひとつが、私をいたぶろうとしているのだ。
「それで、君の望んだ結果は得られたのかい?」
あえて本質を突かないでじわじわと詰め寄ってくるような太宰君の喋り方に、背筋が凍った。
数回会っただけの他人が、自分の家を荒らしまわっているような不快感だ。
「何が言いたいのか、さっぱりだわ。少し黙っててくれるかしら」
中也達が乗り込んでくる前に、拘束を解いておかないといけない。
お喋りに興じている暇などないのだ。というか、これ以上太宰君とは喋りたくない。
それを察したのか太宰君はにまにまと笑ったまま、私の方を凝視しているだけだった。
「君は中也に嫉妬されたかったんだろう?適度な嫉妬は依存につながる。君は中也の一番じゃなくていい、なんて言いながらその実自分に依存して欲しくて仕方がなかった。だから私の誘いに乗ったんだ」
「正解よ、ぐうの音も出ないわ」
何が悪い。好きな人の一番になりたいと思うことが悪いことだとは思わない。
それを中也に押し付けたりしたことは一度だってないのだからいいじゃないか。
そもそも、私がそう思っていたとして、太宰君にはなんの関係もない。
「私にしなよ」
「は?」
「君が気に入ったと言ったんだ」
やっぱり、この男の考えがわからない。
扉の向こう側で、もう皆が突撃しようとしている気配を感じた。ちょうど私の拘束もとけたところだ。敵さんも、私から目を離している。
今のうちに少し距離を取ろうと、足に力を入れたときだった。
激しい爆発音と煙が充満して、一気に視界が悪くなる。
「やっぱり、中也は荒っぽいなぁ。品の欠片もあったもんじゃない。やっぱり私のほうがいいでしょ?」
「中也が荒っぽいのには同意するけど、貴方の良いところが一つも浮かばないので却下よ」
酷いなぁ、なんて言って男は私の腕を引っ張った。
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謝花 - 続編おめでとうございます! (2019年9月16日 8時) (レス) id: 157490c8f1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 柚子豆腐さん» 更新ありがとうございます…!凄く楽しみながら読ませていただいています!私自身太宰も好きなので太宰が夢主に言った「私にしなよ」って言う台詞に凄く(良い意味で)頭を悩ました(大歓喜)それに構わず安定してる夢主も最高です…今後も更新楽しみにしています!! (2019年8月14日 22時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうくん(白夜)(プロフ) - このお話大好き!! (2019年8月13日 11時) (レス) id: 891a01bcc7 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!私自身書きたい話がいくつかできたので書かせていただくことにしました!ご期待に添えますよう頑張りますので続編でもどうかよろしくお願いします。 (2019年8月13日 2時) (レス) id: fe52aa1231 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 続編が読めるなんて夢にも思っていませんでした…!凄く嬉しいです。また新たな中也と夢主の絡みが観れると思うと本当に嬉しいです!私の願いを叶えてくれてありがとうございます!これからも更新心待ちにしています!! (2019年8月12日 18時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年8月12日 0時