22話 ページ22
「無視か手前」
「うるさい」
「喋れんじゃねーか」
「ポートマフィアには入らないわよ」
泣きそうになるのを必死でこらえた。
嬉しかったからだ。
守るべきものを失い、何もなくなったけれど、男に会えた。ただそれだけで私は、泣きそうになるほど嬉しかったのだ。
「お前の部下をとらえた」
随分と、性格が悪い男だ。
姑息な手を使うようなタイプには見えないが、これでもマフィア幹部だ。なんら不思議ではない。
「卑怯な男ね。部下の命が惜しければ組織に入れってことでいいのかしら」
「話が早くて助かる」
「卑怯だけど、蔑んだりしないわ。私が逆の立場でも同じようにしただろうから」
けれど、一つだけ気になったことがある。
彼女はどうしてつかまったのだ。どうして彼女が私にとって脅しになるとわかったのだ。
「で、はいるのかはいらねぇのか」
「入るわよ!わかってて聞いてるでしょ!」
「うし、言質はとったからな」
「死ね」
シンプルにやめろ、と頭を小突かれる。激痛に思わず悶えた。
体を動かせるようになったら絶対に殺すと心に決め、とりあえず男をにらみつける。
「彼女はどこでとらえたの」
「手前が暴れてるとき戻ってきた。異能の止め方はそいつに教わった」
「戻ってきた、まではいいわ。ちょっと待って………異能の止め方ってなに?」
「はぁ?」
私は自分の異能を自らの意志で発動できない。
それと同時に自らの意志で止めることも出来ない。
そう言えば、今までどうやって異能を止めてきたのだろうか。
いつも傷だらけの状態で、目が覚める。
自然と、異能はおさまっているのだろばかり思っていた。
「私の異能に、止め方なんてあったの?」
「……死にかける直前まで行けば、異能は勝手に止まるらしい」
「死にかける直前って、」
「血だ。血を死にかける直前まで流せば自然と異能は止まるらしい」
男はバツが悪そうに床へ目をそらした。
男が私を止めてくれたのだと悟った。
嫌な役回りをさせてしまったことも。
「悪い」
何故か男は謝った。まるで私に悪いことをしたかのように。
「部下のことを言っているのかしら、それならわざわざ敵前に戻ってきたあの子にも責任があるわ」
「違う、そっちじゃねぇ」
なら、私にはわからない。貴方が謝る理由が。
私を止めて、命を救ってくれたのはほかでもない彼だというのに。
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柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時