21話 ページ21
「ふむ、どうしてかな?」
どうしてもこうしても、私はあの組織のボスに拾われたから裏社会へと入ったのだ。
あの組織がなくなった今、好き好んで裏社会の、ましてやポートマフィアにはいる理由などない。
未だに、人を殺すことは慣れない。
マフィアとは暴力を貨幣とした経済行為体だ。つまり、マフィアに所属して、誰のことも傷つけないなど、誰のことも殺さないなどありえないのだ。
「私がポートマフィアに入って得る利益が何もないもの」
「君が望む条件を提示しよう」
「そこまでして私が欲しいの?私のどこにそんな価値を見出したのかしら」
「君の頭脳はすばらしい。君のいた組織のことを部下に調べさせた。事細かに、ボスから下っ端の構成員の詳細を」
何故、そこまでするのか。
これほどの力をもっている組織なら、奇襲を受けたとしても蚊に刺された程度のダメージしかないだろう。
「君の組織で、最も組織に貢献しているのは君だった。君以外の人間はただの駒でしかない」
「……何が言いたいのかしら」
「別に深い意味は無いよ。ただ君の頭脳を評価しているだけだ。決して小さくはないが大きくもないあの組織を存続させ、利益を生んできたのはボスではなく君だ」
「けれど、守り切れなかったわ。私の甘さがあの組織に終わりを迎えさせた」
本当は何度も考えていた。使えないボスならば、私がボスになればいいのではと。
実際、もっと早くにボスを殺し私がボスになっていればあの組織は潰れずに済んだ。
「私はね、その君の頭脳と責任感を買っているのだよ」
「過大評価よ。参謀なんて名ばかりだったし、部下からの信頼もなかった。責任なんて負いたくないもの」
「首領、その取引は俺に任せていただけませんか」
聞き覚えのある声だった。
もう二度と、会えないと覚悟を決めた相手だ。
「中也君がそう言うなんて珍しいねぇ、なら、任せたよ」
いい報告を期待している、なんて言ってポートマフィアの首領は部屋を出て行った。
私は、なんと声をかけたらいいかわからなくてただ黙って天井を見つめるしかできなかった。
「よォ、調子はどうだ」
いいわけないでしょ。ばかじゃないの。といつもの軽口を叩くことはできなかった。
男はまるで別人のようだった。きっと公私をしっかり分けるタイプだったのだろう。
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柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時