2話 ページ2
派手なオレンジ色の頭。成人男性の割には小柄な体躯だが、風格はどう見てもただの会社員ではなさそうだった。
男はワインらしきものを飲んでいて、座っている椅子には高そうなコートがかかっている。そしてその膝には帽子が置かれていて、私を掴んだ手とは反対の手が大事そうに添えられていた。
私の視線に気がついたのか、男はこっちを振り返った。
｢それ飲ンだらさっさと帰れ酔っ払い｣
｢あら、あなた顔に出ないだけで実は随分酔ってるんじゃない？｣
｢あぁ？酔ってねぇよ｣
気分を害された、と言った表情で男は私のことを睨みつけた。よく見たら、首にチョーカーも着いているなと、頭の片隅でぼんやりと考えた。
｢あなた、見ず知らずの女にお節介焼くようなタイプに見えないから。酔って普段でないような仏心が出たんじゃない？｣
｢なら手前は酔うと饒舌になるタイプか？｣
｢どっちかと言えば泣き上戸よ。さっき知った事だけど｣
そう言えば、男は一瞬目を見開いてその後にくく、と喉を鳴らして笑った。｢全然そうは見えねぇな｣なんて言いながら。
男は笑うと随分幼く見えるらしい。
随分と気前よく笑う男に、｢そんなに面白いこと言ったかしら｣と前を向いて言えばようやく笑い声がおさまった。
笑い声がおさまったところで私はようやくグラスに入った水を、ちびちびと飲み始める。
チラリとまた隣を見れば、灰皿に吸いかけの煙草が置かれていた。
｢煙草吸ってくれていいわよ？私が隣に座ったから消してくれたんでしょ？｣
｢随分な自意識過剰野郎だな｣
｢あら、違うの？｣
｢････違わねぇよ｣
紳士ね、と笑えば男はバツが悪そうに向こうを向いて煙草に火をつけた。
そしてこっちを向いたと思えば、吸い込んだ煙草の煙を私に向かって吹きかけたのだ。
｢随分なお誘いね｣
｢なんだ伝わったのか｣
思わず目を丸くした、
煙草の煙を相手の顔にふきかけるという行為には、夜のお誘いという意味があるがあまり知られてはいない。
というか、そんな雑なお誘いをするやつはまずいない。
｢････下手なナンパ｣
｢で、返事は？｣
にやりと男は口角を上げた。
さっきとは打って変わったその笑みに、紛れもなく目の前にいる男は、大人の男なのだと思い知った。
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柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます！最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います！新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (
レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています！お疲れ様でした！ (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます！こちらこそまじ感謝です！これからも頑張ります！ (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます！読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柚子豆腐 | 作成日時：2019年5月14日 5時
