24話 ページ24
それから1ヶ月ほど経ち、私はようやく歩ける迄には回復した。もちろん松葉杖はついているが。
「化け物じみてやがンな」
「あら、首領にも言ったけれど私の生命力はゴキブリ並なの」
「やめろ若い女が自分とゴキブリ並べんな」
1ヶ月間、男は毎日私の病室へ顔を出し時には車椅子に乗せて散歩までさせてくれた。
流石にお酒は飲ませてくれなかったが、欲しいと言ったものはなんでも用意してくれたし、私が元々住んでいたマンションも引き払ってくれ、引越しの準備も何から何までお世話をしてくれた。
今日から、私は正式にポートマフィアの一員になる。
「着替えたら首領のとこまで行くからな」
男は、撃たれた肩の傷を労わってか着替えまで手伝ってくれた。
恥ずかしい、なんて今更言うような間柄でも無いので黙って体を預ける。
「・・・・・本当に、いいのか」
「今更聞くの?そりゃあ私だって、普通にカフェで女給仕をしたり普通の会社でバリバリ働くキャリアウーマンになってみたかったけど」
話を聞きながら、白いシャツのボタンを一つ一つ男はとめていく。
男がどんな表情をしているかは見えなかった。
「脅した本人が、どうして心配なんかするのよ」
「心配なんざしてねぇよ」
「珍しく素直じゃないのね」
「手前は随分と明るくなったな」
「だって、もう背負ってるものが無いもの」
何も背負わない事が、どれだけ楽かを知った。
私の視界がどれだけ狭くなっていたかを知った。
「脅されたからって、貴方を責めたりしないわ。決めたのは私だもの。彼女の就職先を斡旋してくれた事には感謝してるわ」
元部下である彼女は、今はレストランでウエイターをしているらしい。
この男が取り計らってくれたのだ。
「ねぇ、貴方もしかして怯えてるの?あ、ズボンぐらい自分で履けるわよ」
「怯えてるだと?莫迦なこと言ってンじゃねぇよ」
「なら、どうしたの?ここ最近貴方ずっと変よ?」
それはもう、心配になる程に。
私の心が軽くなったのと反比例するかのように、男はめっきり笑わなくなったのだ。
「・・・・・・私、ポートマフィアに入らない方がいいかしら」
「・・・・・・・・・ンな事言ってねぇだろ」
その、微妙な間は明らかに私がポートマフィアに入る事を良しとはしていなかった。
769人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚子豆腐(プロフ) - 天草嶋さん» コメントありがとうございます!最終話までお付き合いいただき本当に嬉しいです。番外編は書くか分かりませんが中也の話はまた書きたいと思ってますので今作以上にかっこいい中也をお届けできればと思います!新作もどうかよろしくお願いします。 (2019年8月6日 3時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
天草嶋(プロフ) - 最終話が拝めて本当に満足です。今まで私が見たどの夢小説の中でも一番理想の中也像が描かれていて本当に大好きな作品でした。終わってしまったのは少し寂しいですが、また何か番外編などあれば是非読みたいです。新作も楽しみにしています!お疲れ様でした! (2019年8月5日 19時) (レス) id: be6bb92be5 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 謝花さん» コメントありがとうございます!こちらこそまじ感謝です!これからも頑張ります! (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
柚子豆腐(プロフ) - 桜咲月菜さん» コメントありがとうございます!読んで下さっている読者様の方こそが神様でございます…でも、嬉しいです…… (2019年7月20日 0時) (レス) id: 39b3b859c1 (このIDを非表示/違反報告)
謝花 - 尊…い…まじ感謝です (2019年7月19日 14時) (レス) id: cfb76e4621 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:柚子豆腐 | 作成日時:2019年5月14日 5時