さよなら代役Ⅲ【8人目】 (ページ1)

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ずっと君のために笑おう【青】ページ1

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「なにかあったよね、」と周りに詰められる。

二人して「別に」と答えて見せるけど、僕まで何だか
Aちゃんの苦悩がこちらまで伝播してきそうに感じた。

前回の話し合いは決裂。

僕もAちゃんがどうしてそこまで思いつめるのか
理由の隅々まで知っているからもう諦めた方がええのか、弱気になる。

雪ちゃんはああ言うたっていっても、
Aちゃんにとっては預かり知らぬ話やし。

長いこと堰き止めていた僕の想いが
すごい勢いでAちゃんに流れ込み苦しめている。
それは、ほんまに悲しい。

でもどうしてか後悔する気持ちが起きへんのはなんでやろう。
すっきりした、このままどんな終わりが告げられても平気みたいな。

僕は長年、この片思いの結末を思い描いてきた。
そのどれもが悪夢のようで、僕は口を閉ざす道を選んだ。

やけど言うてしまった今は何だか晴れ晴れとしている。

もし叶わへんくてもこの恋に意味がなかったことには
ならへんって気が付いたからかな。

僕はもう一度だけ確かめて、身を引くことに決めた。

「あのさ、」

切り出したのはAちゃんだった。

「うん」

「特別や。もう。」

「え？」

「もう考えるのやめた。病むばっかやねんもん。」

「それって」

「……うん。
私ね、ずっと本役になりたかってん。代役やなくて。
誰かの代わりにアイドルやって、誰かの代わりにメンバーになって
誰かの代わりに娘になって……
恋愛も、そう。でも難しかった。
代役人生がいつも私の足を引っ張ってる気して。
でも、なんか、章ちゃん平然としてるし。
やから……うーん、誰かの為にやなくて私の為に、
私の人生の為にやなくて私自身の為に選ばせてもらいたいと思うて。
急？ダメ？もう手札ないけど…」

僕は考えるのを辞めた、という君のぽかんとした笑顔を眩しく思うた。

「待ってた。」

「ありがとう」

「今日からさ」

「うん」

「Aちゃんの為に生きるよ。
喋って、歌って、食べて、あと笑う。」

「…うん。私も、」

「いいよ。」

「え」

「もう誰のためでもなくて、自分の為に生きんねやろ？
僕は、Aちゃんの為に、でもAちゃんは
Aちゃんのために生きて。」

これはまったくの本心やった。

僕は一方的に慣れ切っている。

やからこそ彼女が彼女自身を愛し、認めることが重要やった。

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