ニーチェによれば「未来も現在に影響する」そうですが、異世界で別人に成った人を取り戻す方法を考えましょうか【黒】 (ページ11)

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「……別に、信じてくれなくてええですわ」

「いや、よくそんな嘘がつけるなあと思って」

「嘘とちゃいますって」

「でも今まで会った人の中で一番良い自己紹介でした。
だって仲良くなるために、あはは、」

息も絶え絶えという様子で笑い続けるAを
俺は恨めしそうに見るしかなかった。

「そりゃ仲良くなりたいですよ、
俺はAのこと知ってんねやもん」

「………そうなんですか？」

「そうなんです。ほんまに妄想癖とかとちゃいますから」

「……だとしたら、すごい、なんだか私
山村さん気に入っちゃいました。
私、面白い嘘つける人好きなんです。
芸術って、嘘じゃないですか。
俳優も画家も写真家も演出家も、
みんな嘘つきじゃないですか。
上手な嘘は芸術です。
そんな顔でしれっとこんなこと言えるんだもん、
俳優でもないのが勿体ないくらい。」

「……演技もしてましたよ、向こうで」

「向こうで？」

「アイドルやらしてもうてるんで」

にやりと笑うAに少し拗ねて返す。

するとAはいたずらっぽい表情で
顔を近づけてきた。

「……あの、映画、出ません？
私、綺麗な人が好きなんです。
私いろんな人を見つけてきたので分かるんですけど、
勿体ないから、まあ、無理にとはいいませんけれど、」

「ほんまに？！」

「セリフ、ないかもしれませんけど」

ええんかと返すと、脚本も私だからと笑った。

今日からお友達ですね、すぐにでもまた遊びましょうと
Aは帰っていった。

『不審者でしタよ、よこやまさん』

「Aのお近づきになれただけでもええやん」

『それに、言ってしまうトは』

「気づくどころか、信じてもなかったけどな」

『一般人はあんなの信じまセんよ。
月刊ムーでも読んでいない限り』

「結果オーライやろ」

『まあ、良かったでス』

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