ニーチェによれば「未来も現在に影響する」そうですが、異世界で別人に成った人を取り戻す方法を考えましょうか【黒】 (ページ10)

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こっちでも変わらへんねやな。

傍から見たら独りごと言うて、にやにやしとるように
見えるやろうけどそんなん平気やった。

『アポイントメント、取りましょう』

「せやな、なんか早う会わへんとあかん気がする」

……

「はじめまして、小早川Aです。」

「…えっと、はじめまして、よ…山村です」

さすが急展開。ご都合主義で話が進められるほど
ホテル王はホテル王である。

父親に話を通すと、そんなことは
したことがないようで驚かれた。

(自分の家のモノらしい)ホテルの
レストランの個室にAは現れた。

……間違いない。直感が叫ぶ。

毎日見慣れた顔や。

いや造形ではなく。

いささかメイクも濃いような気するけど。

「この度はホテルヤマムラさんにはお世話になりまして」

「あ、六本木行かせてもらいました。何というか綺麗で、」

「ありがとうございます」

「あの、今取り組んではる仕事って」

個展の最後に、メッセージとして残されていた
文が気になっていた。

「映画です。
やっぱり私、撮りたくて。
またホテルヤマムラさんにお願いするかもしれません。
とってもロケーションとして素敵だから…。
でも、お父様やお兄様は、時たまメディアに
出ていらっしゃるけれど、あなたはお見かけしないので
私勉強不足で存じあげませんでした。
同い年なんですね、私達。」

「そう、ですね。ドラ息子なんやと思います。」

ペラペラ良う喋る。

同じ所を探しながら会話を続けるけれど、
一番分かってほしいことは伝わらない。

「あの！」

「…？」

「俺の顔、なんか覚えてへんかな？」

「どこかでお会いしましたか」

キョトンとした顔を見てすぐに諦める。
駄目やこれ。

「いや、なんでもありません」

「何、言ってみてください」

「笑うや……笑いますよね」

「真剣に聞きますってば」

「別におかしくなったとか、そういうんとちゃうんですけど
僕……並行世界から来たんですよ、元々の世界で
A……さんと、一緒のグループでアイドルやってて
それで、あの、」

Aはしばしフリーズして、その後爆笑した。

いつもの高らかな笑い声やった。

「……そんな、真面目な顔で、そんな変なこと……」

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