さよなら代役【8人目】 (ページ30)

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前に進めない時に出逢ったのがあなたですページ30

前に進めない時に
出逢ったのがあなたです【A】

私に人生を取り戻してくれた人は
私に、愛を教えてくれた。

私を娘と呼び、家なんか建てちゃって
自分で、ママと名乗った。

ママになったその人は私に、新しい名字をくれた。

『そうなの、私ね小林なの。普通でしょ？
ほら、お父さんが作詞始める時に
青山なんて名乗ったから、
私もデビューの時なんとなく、そうなっちゃってさあ』

そうして、私は小林さんになった。

ママは、私が人生を取り戻す為に
色々なことをしてくれた。

一緒にお風呂に入って、プールに行って、海に飛び込んで、
私は、水を怖いと思わなくなった。

私をたくさん抱きしめて、同じ布団で寝て、手をつないで散歩して、

私は、人の温度を暖かいと思うようになった。

関西でjrをやりたい、というわがままを聞いてくれて、
嘘をついたら、怒られて、
夜遅くなったり、泊まりの日は心配された。

ママは、私に舞台や映画を見せ
おじいちゃんは、私にレコードやCDを聞かせ
いつも3人で、再現して遊んだ。

私を、友達みんなに娘だと紹介し
あちこちへ、私を連れて出掛け
何か、批判的なことを言った人にいちいち憤慨した。

そのことに関しては頑固で、手が付けられなかった。

なのに、修学旅行でお土産を買ってきたり
ママの出るドラマを見たり
他所で、ママの話をしただけで
涙を流して、感動する女の人だった。

そして私は、ママを喜ばせるという
人に与える幸せを知った。

私は、へんてこなこの家族関係によって
心の底からの幸福を教えてもらった。

それは、ママの選んだ方法であり
私の決めた覚悟によって成り立っていた。

だからこそ、特別だったし
それを維持し、愛することの
難しさと必要性が骨身に染みて分かっている。

傍から見れば親離れしてない
子供のままに見えるのかもしれない。

でも私達は、ずっと新米の気持ちで家族をやっている。

これからも変わらないと思う。

3人とも勝手になった訳ではなく選んで今、ここにいる。

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