醒めない夢の中で笑う君は【青】 ページ27
醒めない夢の中で笑う君は【青】
あの頃の僕らは、君のことを、少し誤解してたんや。
僕もみんなも、関西Jrに女の子が入って
それやのに、ばんばんドラマとか映画とかに出て、
なんとなく抜かされたような気持ちになってたのを覚えてる。
でもその子は、懐に入るのがほんまに巧くて
僕らは、みんないっぺんにその小さな弟を、気に入ってしまった。
下の名前で呼ぶのは恥ずかしくて
でも、南、南って可愛がって
あっちも、柴犬みたくきゃんきゃん付いてきて。
そりゃ、意地悪な事言うたりハブる奴も居ったけど
それは、南と同いくらいのちびっこJrばっかりやったから
俺とか、もうちょい上らへんがちょいちょい叱ったりしてた。
亮とかは、ほぼ脅してたけど。
そんな中、入って一年くらいで、南はレッスンに来うへんくなった。
「私な、ひっこしすんねん。
やからな、東京のJrになることになってん」
そんな風に笑顔で手を降って、
南は、僕らのそばからいなくなった。
そっからは、デビュー組の先輩のバックに付いてたり、
またドラマに出たりするのを僕たちはテレビ越しに見ていた。
東京での仕事は殆ど一緒になることもなかったけど
元気そうやったし、俺らの認識としては
「あの子はきっとまだまだ上に行くんやろうな」
って感じやった。
どんな方法かは分かれへんけどきっとこの事務所で
上手くやるんやろうとしか思わへんかったんや。
でもまたそこから一年くらいしたら、
南を、テレビでもよう見いひんくなった。
僻み混じりの、東京からやってくる噂話も
ここまで届かなくなった。
雑誌にあれだけ出ていた名前も、全く見なくなった。
Jrの世界ではよくあることやけど
南に限ってそんなことあるんやろうか。
ある日、信ちゃんがみんなを代表して
上の人に聞きに行ってくれた。
答えは活動休止、復帰の目処なしという宣告やった。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年2月27日 11時
