この世界の終着点にて ページ23
あぁ、ここ知ってる。
彼岸花の咲き狂う白の世界。
でも以前と違って道がある。川を渡る橋があってその先に巨大な門のようなものが見える。
きっとここを渡ったらイゾウやマルコにはもう…
不意に振り返ってみれば後ろは崖でジワジワと足場が削れているのがわかった。
さっさと行けってか、わかったよ。
橋は私が歩いたところからどんどん消えていく。
これで私も亡者の仲間入りか。生前も地獄のような日々と比喩で表してきたが本物の地獄とは一体どんなもんなのだろうか。
そんなことをぼんやり考えながら彼岸花畑の一本道を一歩一歩進んでいく。
門に近づくにつれその大きさが顕になっていく。それと同時にだんだん霧が濃くなってきて周りが見渡しづらくなった。
門の前、誰かがたっているのに気づけなかったのはその霧のせいだった。
かなり近づいてやっと影が見えたくらいだ。
「アイリン」
その私を呼ぶ一言だけでわかった。
「ったく来るの早ェよ…なんのために俺がお前を現世に戻したと」
『エースッ…！えーす…ッう…あぁ、ぅぁぁぁああ…』
「うおっ！アイリン！」
抱きとめてくれた腕も耳元で聴こえる声も涙で滲んで見えるその顔も全部がエースの存在を伝えてくる。
久しぶりに声を上げて泣いた。
死に際にも泣かなかったのに、あの日からサボの前でしか涙が出なかったのに嘘のようにとめどなく決壊した涙はエースを濡らした。
「…早くねェか。俺にとってもお前のいない1年は長かったもんな。
よく生きたな、アイリン。頑張ったな」
『う、ぁぁあ、ぅぅぅ…えー、す』
「一緒にいてやれなくてごめんな。もう、1人にしねえから」
子供をあやすようにぎゅっと抱きしめ頭を優しく撫でてくる大きい手。
その動作一つ一つに泣けてきて涙の止め方が分からなくなる。
「アイリン」
エースの胸から顔を上げると目の前には彼の顔があって唇の柔らかい感触がした。
「ししっ、涙止まったな」
『ッエース…』
「じゃ、行くか」
『わっ』
エースは軽々と私を抱き上げると門をくぐっていく。
『この先は地獄？』
「行ってみてからのお楽しみだ」
『楽しみじゃないんだけど』
「大丈夫、地獄なんかじゃねェよ」
開けたそこには美しい桃源郷が広がっていた。
そしてその先、ひときわ大きな人影がひとつ。
「来たかァ、アイリン」
『おやじぃぃ』
また私が再び大泣きしたのは言うまでもないだろう。
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葵(プロフ) - Reiさん» Rei様コメントありがとうございます。お褒めの言葉が大渋滞で光栄の極みです！長い作品になりましたが最後まで読んで頂きありがとうございました！！ (9月21日 1時) (
レス) @page28 id: a9dfcafb0e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - 最後までお話読ませていただきました!!!作者様マジで文才凄いです!!!!!!感動シーンの耽美に私もう何回も泣いちゃって(オーバーな表現とかじゃなくてマジで)涙腺画だいぶ緩くなっちゃいました（笑）めっちゃ尊敬します。こんな神作品を作って頂きありがとうございました! (8月8日 9時) (レス) @page29 id: b86dee8da5 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - なこさん» なこ様コメントありがとうございます。ドキドキハラハラしていただけて何よりです！なこ様の温かいお言葉本当に嬉しかったです！最後までお読みいただいて本当にありがとうございました！ (2023年2月23日 13時) (レス) id: d6d31879de (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - 葵さん» ほんの少しでも葵様のお力になれていたとしたら本望です´`* ココナッツでは長いでしょうから、是非ココとお呼びください~ 次作も楽しみにしております！ お疲れ様でした~！ (2023年2月21日 23時) (レス) id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！どのような物語展開になるのかと、頂上決戦始まり時はドキドキハラハラさせて頂きながら読ませて頂いていました。最後はまた巡り巡ってエースとハッピーエンド♡本当に良かったです！！おつかれさまでした(๑>◡<๑) (2023年2月21日 22時) (レス) @page27 id: 2ce513ca08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葵 | 作成日時：2023年2月7日 22時
