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翌日はアイリンが乗船してから初めての上陸日だった。
とはいえアイリンはお尋ね者。
部屋からすら出たこともないアイリンは当然の事ながら留守番で窓から見える街の風景を眺めていた。
そして部屋から出ずとも船の様子がいつもより騒がしいのを感じた。
いつもより足音が沢山するし、大きな人の声もよく聞こえる。
ッ大きな男の人の声…重い足音……
やはり苦手だなぁ。
○
朝から出払っていたナースたちは帰ってくるなり私を着替えさせ始めた。島に降りた機会に私の服や日用品を買い揃えてきてくれたらしい。
「この服あんたに似合うと思ったのよ〜！私の目に狂いはなかったわ！」
「アイリンは何着ても似合うでしょう！でもこういうカッコイイ系も似合うのねぇ！イケメンだわァ！！」
きゃっきゃとナースたちと戯れているとコンコンとノックの音。
この部屋に来る人でノックをしてくるなんてマルコくらいだと思いドアを開けるとそこに居たのはマルコではなかった。
『イゾウさん…！』
「アイリン、今日は随分かっこいいな。お前さん、本当なんでも似合うなァ。
少しだけ時間いいかい？」
『勿論！今ちょうどナースさんたちが買ってきてくれた服を色々来てたとこなんです。イゾウさんも島に降りたんですか？』
「あぁ、さっき帰ってきてな。これ、良かったら受け取ってくれ」
それは服のようだった。
中身を出すと丈の長い上着のようだ。
黒を基調としたシンプルな作りだがしっかりとした生地で、大きなフードが着いている。
『着てみても、いいですか？』
「勿論だ」
着てみるととても着心地がよくフードを被ると顔の半分くらいが隠れ、周りが見えなくなってしまったが、光に遮断され包まれている感じもして少し落ち着いた。
「サイズが少し大きかったか…？
どんな服にもこのくらいシンプルなら合わせやすいと思ってな。
あと、お前がいつかこの部屋を出ようとした時、また緊張しちまった時、フードを被れば物理的に視界も遮断できるし少しは落ち着けるかと思ったんだが、どうだ？でかすぎるか、流石に」
『ううん！ありがとうイゾウさん！！着心地もいいし、デザインもすっごく素敵です！
似合いますか？』
「そうか、よかった。よく似合ってるぞ」
自分の体ごともらった服を抱きしめるアイリン。
ボーイッシュな服装とは裏腹に女の子らしいそのリアクションに周りの大人は花畑にいるようなほほ笑みを浮かべるのだった。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
