運命の炎の糸-3-【白ひげ海賊団】 (ページ38)

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あれからアイリンは黒フードをほぼ毎日のように着ていた。

長袖だが厚手ではないそれは極端な夏島や冬島でない限り着ていられるような勝手のいい服で、アイリンは心底気に入っていた。

その様子を聞きイゾウは悶え、マルコは俺もなにか買ってくればよかったと悔しがり、他の船員は呆れたような生暖かい目を向けた。

船はまた海の上に戻り、いつもの日常が帰ってきた頃。ナース室の扉を叩く音が響いた。

最近のアイリンのマイブームはそのノックだけでイゾウかマルコか当てるというもの。勝率はまだ3割である。

『マルコ？』

がチャリと扉を開く。

「よぅ、どうだ。今日は当たったか？」

『は、外した…』

「マルコじゃなくて残念だったな。あいつは不寝番空けでまだ寝てんだ、俺で我慢しな」

『や！マルコが良かったわけじゃないですよ！！』

「それはそれでマルコが泣いちまいそうだ」

手土産だ、といつものようにサッチさんのお菓子をくれる。いつもいつも用意してくれるサッチさんになんだか申し訳なくなってしまう。

紅茶を入れて、菓子を食べながら他愛もない話をしているとふと、イゾウさんが真剣そうな顔をした。

「お嬢、前にも少し言ったがもしお前さんがこの部屋を出てみてェなら俺もマルコも力を貸そう。

俺らの仲間もお前さんに会いたがってるやつは多い。

まだ怖いってんなら無理強いはしねェが、いつか出てェと思ってんならもうそろっといい時期なんじゃねェか？」

『！』

前から話していたことだ。

この船に乗ってからずっと隔離されたこのナース部屋での生活は私にとっては快適だが、それはただ守られているに過ぎないこと。

マルコとイゾウさんと話せるようになったと言えどたった2人。まだまだ男性を克服したとはとても言えない。

いつかじゃダメだ、動かなきゃ…

『…はい、！外に、出たいです』

「！そうか…分かった。次、マルコと俺が時間が合う日に少し船の中歩いてみるとしよう」

『ありがとうございます、イゾウさん』

「ん、あとそれ」

『？なんですか…？』

「敬語、なくていいぞ。マルコも呼び捨てで敬語なかっただろう？」

『いいん……いいの？』

「むしろそっちの方がいい」

『分かった。イゾウ！』

「イゾウお兄ちゃんでもいいんだぞ？」

『も、もう呼ばない！』

「照れなさんな、可愛いだけだ」

『んにゃ！？』

この人はつくづく心臓に悪い。