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紅茶を注ぎながらそう切り出すアイリン。
頼まれ事なんて初めてだ、一体何を頼まれるのか。
『他の人にも、会ってみたいの』
雷が頭に落ちるような衝撃とはまさにこの事。
そりゃ、ゆくゆくは必要な事だと考えていた。
でもまだ1週間、俺と話すようになってまだ1週間なのだ。
と思いつつアイリンな顔を見返せば変わらず真っ直ぐな目で射抜かれる。
…本気の目だ。
アイリンは基本いい子だが、時折変なところでワガママというか頑固なところがあるというのは最近知った。
いや決してもう少しだけ俺だけがアイリンと話していたかったとかは別に思ってない。
「そうか、誰か会ってみてェやつとか居るのか？」
『船長さん』
「せんちょう、さん…」
オヤジをこの部屋に呼ぶのはなかなか難し…というか物理的に無理。
かといってこいつを部屋から連れ出すのはまだ早い…
『…だめ？』
「ぐ………ほ、他はいねェのかよい」
『…サッチさん、とか』
「げ」
よりによってあいつか。
あいつを連れてくることによって問題になるのはナースの方だ。多分部屋に入れたがらない。
アイリンのためならと、許してくれそうではあるが。
『…だめなの？』
「いや、ダメって訳じゃないんだが…あいつは女と話す時めんどくさいのがさらにめんどくさくなるからよい…」
『でもいつもご飯作ってくれてるお礼も言いたいよ』
「なら俺の時みたいにまず手紙を書いてみたらどうだ？あいつはたぶんそれだけで喜ぶだろうよい」
『そう、かなぁ…』
「会いたいのはその2人だけかよい？」
『あと……イゾウ、さん』
「イゾウ？」
意外な名前が出た。
イゾウとアイリンの関わりといえば、写真を見て10歳若いと勘違いしたくらいだろう。
「言っとくが、あいつは男だし、俺と同い年だよい」
『もう知ってるよ。私が勘違いしたの知ってるんだ』
「お前が俺をもっと年上だと思ったって言ったのもな」
『それはごめんて。会ってみたら意外と若かったよ』
「あんま嬉しくねェよい」
イゾウか。まぁ悪くは無い人選だと思う。
女形で中性的なあいつなら先入観的にも取り入りやすいところはあるだろう。喋り方も背格好もだいぶ男だが頭がフランスパンみてェな男よりは話しやすいだろ。
「分かったよい。話をしておく。
イゾウにも手紙、書くか？」
『うん！ありがとう！』
アイリンは紙を戸棚から取り出すと悩みながらも綺麗な時で筆を走らせていった。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
