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娘は3日高熱の中眠り続けた。
あの体力じゃ死んでもおかしくない中、一命を取り留めたのは奇跡だとも言える。
その間、何度かあのものが浮かび上がったり部屋が揺れたりという現象も起こったが、最初のあれほどでかいものは来ることも無く直ぐに収まった。
意識を取り戻したあとも熱に浮かされながら生死の狭間をさまよい続け数日、ようやく熱も下がり始め意識もはっきりしはじめた。
だが、本当に困ったのはそれからだった。
『………ひっ……や……ぅ……』
おそらくPTSD。
ドレイとしてどんな生活をしてきたのか想像もしたくないが意味の無いうわ言を吐いたり、錯乱状態になることも少なくなかった。
特に男に対してかなり恐怖心があるようでナースたちに部屋から追い出された。
「…はぁぁ…」
「疲れているな」
「ん、流石にな」
「あのお嬢さんのことか」
「俺ァ医者だが長い時間この船の船医だったからよい、女の看病がこんなに大変だとは思わなかったよい」
「まぁ、そうだろうな。それにしては頑張ってるじゃねェか？」
「当たり前だろい。
苦しんでるやつほっとける医者がどこにいんだよい」
「……ふっそうか、でもあまり無理するなよ」
「あぁ、ありがとよい」
部屋に戻ると娘はまた眠っているようだった。
ナース長もまた疲れた顔をしていてあまりいい進展はないということが見てとれた。
「ここの事もドレイ船か何かと勘違いしてるままだね。なんでもやります、働きます、って。
熱は下がったといっても栄養もまだまだ足りてないってのに。これは時間がかかるね」
「…そうかい」
当然と言えば当然。
体の状態を見た時、彼女の体は見るに堪えない傷痕だらけだった。
切り傷、火傷、打撲痕…数をあげればキリがないほどだ。
そして何より顔のキズ。
綺麗な顔に一線引かれたような痛々しい裂傷。右頬に大きく残る口の端から続くそれは女としちゃ受け入れ難いものだっただろう。こんな美人ならなおさら。
どうにかしてやりてェが…
男の俺に出来ることはあまりねェのかもしれない。
自分の無力さを噛み締めていると部屋をノックする音が。
返事をすればジョズの声が返ってきて、一言。
親父が呼んでる。
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作者名：葵 | 作成日時：2023年1月12日 8時
