【歌い手】10年後、また。 (ページ2)

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「なにがいつから？」

「…、へっ？」

俺がさっき溢した、独り言が拾われて驚く。

目の前にいたのは数ヶ月ぶりにみた従兄妹。
自分と頭一つ分以上違う彼女が正面に立っていた。

「はろ～」

彼女は昔から緩やかに声を出して話をする。
俺は意外と、彼女の雲みたいにつかめない話し方が気に入っているのだが。

「A！久しぶり～」

「ひさしぶり～。今からあまちゃん家行こうと思ってたの～」

なんで家に来るのか聞くと、理由がないと言っちゃダメなのかと頬を膨らました。

秋を先取りしたかのような茶色いワンピースを着て、そんな顔をするものだからリスにしか見えないな。
なんて、内容のないことを考えていた。

「ほんとはあまちゃんママのご飯食べたかったから！あのね。昨日、あまちゃんママに電話したら来ていいよ～って言われたの」

「あー。…そういえば朝言っていたかも」

ぼんやりとした朝の記憶を思い出す。

隣で楽しそうに話す彼女を見ているうちに、ついさっきまで何を考えてたのかすら忘れてしまった。

きっと俺は、悩みなんてない人間なんだろうなぁ。
なんて、楽観主義者の自分を心の中で密かに笑った。

家に着くまで着くまであと8分。