【銀魂】己の行く道 途切れた糸【土方十四郎】

非番　土方side ページ9

土方side


…Aが斬られてから一夜明け、翌日。昨日の夜に、そんなことがあっただなんて思えないくらいに、空は清々しく晴れわたっており、見事な秋の青空であった。輪郭の優しい雲が浮かび、ゆっくりと風に動かされている。どうやら今日は、少し風が強いらしく、屯所の窓も時折ガタガタと音をたてていた。そんな中。


土「…Aを暫く非番に…」

近「あぁ」


…俺の部屋に近藤さんが訪れた。何事かと聞いてみれば、Aを暫くの間休ませてやろう、ということらしかった。近藤さんは俺の部屋に足を踏み入れ、俺の目の前に座ると、頷いた。


近「昨日の一件で、きっとAも酷く消耗しただろう。それに、あの怪我じゃあ、無理をさせられねェだろ？」

土「…そうだな」


…確かに、そう思う。Aの傷は、急所は避けてあったものの、深く斬られていた。恐らく跡が残るだろう、大きな傷だった。10年前から戦場を駆け回っていたアイツのことだから、そこまで気にはしていないだろうとは思うけれど、それでも、Aだって女の端くれだ。きっと、何か思うことはあるかもしれない。

傷は深く、大きかった。きっとそれなりに痛むだろう。そんな中、働かせるのも気が引けるし、見回りなんぞに行かせて攘夷志士と斬り合いにでもなってみろ、きっと更なる深傷を負ってしまうだろう。Aを非番にさせることに、反論はなかった。


近「Aが居ない分、お前に負担がいっちまうかもしれんが、俺も出来る限りサポートするから」

土「あぁ、助かる」


…そんなことを話し合うと、近藤さんは自室へと戻って行った。近藤さんがサポートに回ってくれるとはいえ、近藤さん自身にも仕事は山のようにある。ああは言ったって、早々無理をさせるもんじゃねぇなとも思う。こんな時に総悟のやる気が開花してはくれないものかと強く思うが、恐らくそんなことは有り得ないだろう。残念ながら。


そんなことを考えながら、俺はAの部屋へと向かった。Aの様子を見に行くのもそうだが、暫く非番になることを伝えるつもりだった。廊下を進むこと数分。Aの部屋がある角を曲がると、その先にはAが居た。


土「…A…？」


……眉がピクリと動く感覚があった。

Aは裸足のまま庭に出ており、膝から崩れたようにペタリと座り込んでいたのだ。どう見ても、何かがあったのだと理解するには、その状況は異様だった。うつ向いて、力なく項垂れている。


土「……どうした」


A、と。ソイツの名前を呼ぶと、ビクッ、と肩を揺らした。


「……土方、さん…」

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