赤色 ページ7
高『……俺の隣に居やがれ』
……そう、月明かりに照らされた桜の木の下で言ってくれた時の晋助は、優しく私に触れてくれた晋助は、もう、いないのだろうか。あの日、すべてを失ったあの日に、彼の中ですべてが崩れてしまったのだろうか。音も出さないまま、私も気付かないままに、そうして晋助は、何処かへ行ってしまったのだろうか。もう、私の手なんか、届かない所にまで。
…もし、あの日、晋助を変えてしまった何かに、晋助の心の闇に気付いていたら。あの手を掴んでいれば、今が変わっていたかもしれない。そんな後悔が、拭いきれない。もう一度あの日に戻れたら。そんな願いは、叶うことなどないのだ。ただひたすらに、現状が続いていくだけ。
……どんなに苦しくても、どんなに目の前が真っ暗でも、その道を進むしか、ないのだから。
「……いつまでも、こうしてはいられないしね」
……動き出さなければ。
私は窓から離れて、櫛で髪をとかし始める。そういえば昨日はお風呂に入っていない。そのせいか、少しだけ髪がからまっているように思える。いつものように髪をといて、私は机の上におかれていた、赤いリボンを手に取る。
……晋助がくれた、赤いリボン。
今までも、何度かほつれかけてしまって、その度に縫ったりして直して、私の髪に結んできた。御守りのように大事にしてきた。そんな赤色を見つめては、また胸が苦しくなる。10年間、私はこれに、悪く言えば縛り付けられているように思える。それでも、手放すことは出来なかった。手放そうとは思わなかった。
……不器用だった晋助からの、最初で最後のプレゼントだったからだ。
今は、このリボンでしか、晋助を感じられないから。この赤色は、私と晋助を結びつけてくれる、糸のようなものだから。そう、私は勝手に思い続けていた。だから、手放せなかった。
……これを見るたびに、晋助のことを、思い出せるから。
…晋助が私の隣にいた日々を。
…晋助が私に触れてくれた手の体温を。
…晋助が私の名前を呼ぶ声を。
……忘れないように。なくしてしまわないように。
「…」
…そうして、一時それを手にのせて眺めてから、髪を一つに纏めて結ぼうとする。いつもと同じように。
……けれど。
「……ぇ…」
……私の髪に結び付けようとした瞬間、手の中で、プツリというような音が微かに聞こえた。何事かと思って、頭からそれを持ってくると。
「……ぁ、」
……赤いリボンは、ほつれて、切れてしまっていた。
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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» やったよ土方さん!!やっちゃいましたよ土方さん!!!しーちゃんのコメントで叫びそうになってるピー姉です(笑) キュンキュンしてくれたなら嬉しい!!あ、でもご飯はちゃんと食べてください(笑) これからも存分にキュンキュンしてくれるように頑張るね!! (2017年11月27日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 蜜柑さん» 蜜柑さん!ありがとうございます!!土方さんが遂に始動です!!どうやってこれからアクションさせようか試行錯誤中ですが、かっこよく出来たらいいなと思ってます!これからも悶絶して頂けるようなものを書けるように頑張りますので、お楽しみ頂ければ幸いです!! (2017年11月27日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - あ''ああああああああぁぁあぁ、よくやった土方ァ!! と心の中で叫びまくってるしーちゃんです。こりゃたまらんですよピー姉!! あんたって奴はどうしてこうも私の胸をキュンキュンさせるのが上手いんだい!? これから一週間飲まず食わずでも生きられそうだよ! (2017年11月27日 0時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - うわああああああああ( *´艸`)土方さんがついに言った!!((うるさくしてすみません笑)この先も楽しみです。更新待ってます! (2017年11月26日 23時) (レス) id: 6a812c0c50 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヨッシーさん» ヨッシーさん!ありがとうございます!電池のとこは人気があって嬉しいです!下手な誤魔化しをする土方さんは完全に私得なんですけど、そこを通ってからのイケメン!みたいな(笑) これからの展開にご期待くだされば幸いです!頑張らせて頂きます! (2017年11月26日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年11月6日 18時