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「半分こは君とだけ」by いちたに ページ1
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「Aー！帰ろ」
夏の夕方18時の太陽に照らされて、校舎内の廊下が、白い壁が、全て鮮やかなオレンジに染まる。委員会終わりの誰もいない教室で、幼馴染の坂田は笑顔で私に手を振った。
「ごめんっ、待った？」
「んー待った！」
「ですよね〜……お待たせしました……」
笑顔のままそう教えてくれる坂田を前に少し項垂れる。教室に入ってきた私を見た彼はその何も入ってなさそうな薄いカバンを肩にかけてこちらへと向かい、私と並んで廊下に出た。
グラウンドから聞こえる声が遠くなって、オレンジ色の世界に私たち2人だけの足音が響く。
「待ったけど、Aと帰りたかったから」
そう言って先程とは違った表情で微笑む様子がどうにも眩しくて。眩しすぎてもはや私には毒だった。
部活がない日、そしていつ終わるのか全く検討のつかない私の委員会の日、それが今日だった。
それでも根気よく待ってくれていた事実と、真っ直ぐなその言葉に耐えきれなくなった口角がゆるゆると上がる。
「アイス半分こでええけど」
にやつきを抑えられていないままの彼が私の顔を覗く。上がった口角はすぼめて誤魔化して、いくらでも買うよなんて本音も隠して、ちゃっかりしてるなぁと呆れたように笑ってみせた。
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作者名：作者一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月29日 22時
