43.残酷 ページ43
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違うと言えない。
どうして言えないの。
わたしが大好きになったあの物語のヒロインは、
こうゆうとき、大倉くんに何て言う？私はただ、涙を流すだけしかできない。
大『……違うなら違うって言えばいいのに。』
そう言ってまた、残酷なキスをした。
「…好きじゃない」
大『はっ。嘘ばっか。』
「好きじゃない！！」
胸が痛い。好きじゃないと叫ぶ度に胸が痛い。
その時、
一「忠義〜ごめんな遅くなって」
玄関から声がしてすぐ、スーパーの袋を両手に抱えて、リビングに入ってきた。
一「どう、したん、2人とも……？」
異様な雰囲気に、一花ちゃんは目を丸めた。
今、おそらくみんな視線が合わない。
一「A……なんで泣いてんの……？大丈夫……？」
一花ちゃん、一花ちゃんが大倉くんの彼女。2人はずっと昔から想いあってきて、去年やっと結ばれた。
わたしが一花ちゃんの不安材料になる訳にはいかない。きっと大倉くんの中でも私は気まぐれだ。そうじゃないと残酷すぎる。
「大倉くんと喧嘩しただけ(笑)」
一「喧嘩…？じゃあ忠義が100悪いな」
一「忠義〜ちゃんと謝りや」
と、一花ちゃんが言った瞬間だった。バタッと大倉くんが倒れて、一花ちゃんは慌てて抱き起こす。おでこに触れた彼女は「なんでこんな熱あんの！？！？」と泣きそうな声。私も慌てて触れたら、また熱が上がって来てるようで、すごく熱い。
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私ができることを一通りして、一花ちゃんが大倉くんを部屋に運び終わった後、
一「Aありがとう、忠義の親御さんもうじき帰ってくると思うから。」
彼女の言葉に甘えて家を出た。何も考えず勝手に走り出す足。会いたい人はたった一人。
「横山先輩ッ…」
横「A！お前どこにっ、…てかなんで電話でえへんのっ？」
心配したやろ、と…いきなり家に押しかけた私を、横山先輩は抱きしめてくれた。
「ごめんなさい…、ごめんなさい！…」
その日、横山先輩の胸の中でひたすら謝り続けた。
数日後、おそらく復活したであろう大倉くんを下駄箱で見つけ、言うなら今しかないと思って「この間のこと、無かったことにするから」と勇気を振り絞って言ったら
大『この間なんかあったっけ…？ごめん、熱であんま覚えてないねん。』
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作者名：∞くらゆい∞
| 作成日時：2021年8月29日 0時
