五十九話 ページ11
手紙の内容はそこで途切れていた。
残りの下の部分は滲んだ血で見えなくなっていたのだ。
他にも手紙の字は所々歪んでいる。
いつもずっと笑っているだけだった父が泣くほど愛した人。
そんな人に殺されたのかと思うとやはり怒りが湧いてくる。
それから無造作に手紙を仕舞おうと封筒を開けると、まだ何か紙が入っていることに気がつく。
取り出してみると一枚の写真だ。
俺が生まれたばかりの、母の出産時の写真だった。
俺が一人泣いている中、両親や周りの奴らは笑っている。
写真の裏には、明らかに父の字とは違う字で
”ごめんね”
そう書かれていた。
涙のあともあった。
それに重なるように、雫が降っている。
雨なんて降っていない。
風がただ、俺の頬を撫でるだけだった。
しかし風が当たる頬は異様に冷たい。
鼻をすする音が響く。
周りに人はいない。
心臓の鼓動が早くなる。
べつに驚いているわけではない。
視界が歪む。
眠いわけでもない。
喉に何か突っかかっている感じがする。
どんどん力が入らなくなっていく。
体が震えている。
だが、今まで感じたことの無い不気味なほど重たい、けれど内側に暖かいものが宿った感覚。
「あら、泣いているのかしら」
先程までは耳障りだとすら思っていた女の声が降ってくる。
不思議と何も感じない。
「何が書いてあったのかは知らないけれど……。
良かったですね、その残した手紙を読んだ彼は確かにあなたが育てたことになると思います。」
その言葉を聞いて、スっと頭が軽くなる。
全身の力が抜け、墓の前に両膝をつく。
まだ、母だった女を許そうと思わないし、許すことは一生無いだろう。
だが、父と出会ってくれて受け入れてくれたことを思うと見る目があったんだと思う。
「……妃御殿A。
感謝する、久しぶりの再会は少し歪だが俺に足りないものの意味を理解した。
あの弟子三人がお前の事を酷く慕っていた。
今はその理由もわかる気がする。
父が書いていたそんな人、というのに俺は既に出会っていたらしい。」
そう言うと、妃御殿Aは
「そっか、よかったね」
そう言って笑った。
女というものは、こんなにも綺麗に美しく笑うんだな。
〜牛島若利 side end〜
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時間一日（ときまいちじつ）(プロフ) - 緋絽さん» コメントありがとうございます！これからもキャラたくさん出てくる(出す予定)なので楽しみにしていただけると嬉しいです^^* (2020年2月21日 16時) (
レス) id: 4c0ef34530 (このIDを非表示/違反報告)
緋絽(プロフ) - めっさタイプのストーリーで度肝抜かれました。続き楽しみに待ってます。次はどこのキャラが出てくるのか、楽しみです。 (2020年2月20日 3時) (レス) id: 9dee7f56fc (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ@天かすっこ(プロフ) - 時間一日（ときまいちじつ）さん» 全然大丈夫です！これからも楽しみにしてます！ (2020年1月30日 16時) (レス) id: f129b71bbe (このIDを非表示/違反報告)
時間一日（ときまいちじつ）(プロフ) - ひとみ@天かすっこさん» 返信遅くなってしまいすいません。応援ありがとうございます、励みになります。更新頑張ります^^* (2020年1月29日 23時) (レス) id: 4c0ef34530 (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ@天かすっこ(プロフ) - 1月初めから読み始めたんですけどこの話が私の好みドンピシャで、すごく好きです！これからも更新待ってるので頑張ってください！ (2020年1月25日 19時) (レス) id: f129b71bbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時間 一日（ときま いちじつ） | 作成日時：2019年12月15日 23時
