-アンドロイド≠主従- 《俺足》

28，そして君は微笑んだ。 ページ29

太「おーい、戻って来い。」

渉「・・・・・・やーだね。」

イラッと来る。
何なんだ、コイツ。

太「へー、俺らの友情はそんなに簡単に壊れるのかー。」

渉「そういうのやめよう、ねっ？」

太「俺はお前にとって要らない存在だったのかー。」

渉「うぅ。」

俺の方へ転がって来た。
素直な奴。
星をもう一度見る。
意外と、見えるもんだな。
旅館の時ほどではないけど思ったよりは星が見えた。
・・・・・今まで見なかっただけか。
会社が忙しくてゆっくり出来なかったから。
って、自分で分かる嘘を吐いてみる。
見たくなかった、広い世界を。
会社に毒された自分が浮き彫りになって見えるような気がしたんだ。
ふと渉を見ると、何故か泣いていた。

太「えっ、何で泣いてんのっ？」

渉「ごめん、嫌な想像しちゃった・・・・・。」

大きな手で小さな涙の粒を掬い取った。

太「どんな？」

渉「・・・俺さぁ、大切な人がいきなり死んだらとか考えちゃうの。」

設定込んでるな。

渉「幸せだからかな・・・今太輔が居なくなったらって想像して・・・・・。」

恥ずかしそうに笑う。
少し顔が赤くなっていた。

太「それは、俺が渉の大切な人になれたって意味で捉えて良いの？」

言われて気付いたのか、今度は顔を隠した。
顔赤い。

渉「まぁ、太輔は俺の親友だもんな！」

照れ隠しのようにそう言った。
そして手を出す渉。

太「ふっ・・・馬鹿、大好き。」

旅館に行ったときは言えなかったこの言葉。
俺は出された手を強く握った。



-



健「・・・・・高嗣、入って来て良いよ。」

高「いっ居ないよ！高嗣君は聞いてないっ！」

本気なのかよく分からないボケをかます。
聞いちゃったのか、話。
部屋を出て、外に居た高嗣と自分の部屋に戻る。

高「・・・もしかして太輔の話だった？」

健「あぁ、宏光がアホやらかしてデータが吹っ飛ぶことになった。」

こんな冷静ではいられない。
本当ならもっと焦ってなきゃ。
本人からしてみれば記憶が無くなるんだ。
しかもＩＣチップだって製造に一週間以上かかる。

高「けど、健永があんなに怒るとは思わなかったよ。」

健「えっ？」

高「だって何時も仲裁してるイメージだし。」

確かに、昔からそうだったな。
今回は許せなかったんだ。
この事件の一番の被害者は渉だろう。
俺には分かる。
言えるような面じゃないけど。

健「俺は、俺を増やしたくないだけ。」

そうカッコつけて言った。
あの苦しさを味わわせたくないんだ。

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