6，捏造体育祭 ページ6
体育祭当日。
かつてオリンピックで流れたとされるファンファーレをバックミュージックに、大勢の観客から見られるというこの仕打ち。
こればかりは来年になっても慣れないんだろう。
「辛い…帰りたい……！」
「天喰ってほんと小心者だよなー。」
「マジでノミの心臓じゃん。ウケる。お茶あげるからしゃんとしなよ。」
ミリオを通じて仲良くなったクラスメイトが話しかけてくる。
女子のほうはあまり得意なタイプではないが、それでも肝の小さい俺を心配してくれる2人は、悪い人達ではない。
「……ありがとう。気持ちだけ貰っておく。」
2年生種目の進行役はプレゼントマイクだ。壇上で大声を出す様は、もはやそういうコメディアンみたいな雰囲気が溢れ出ていた。
───
──
「OK！Everybody！まず最初の競技はー！？」
体育祭開催の言葉やらが並べられた開会式を終え、後ろにあるモニターに種目ルーレットが映った。
「徒競走だ！」
「普通だ。」
「普通じゃん。」
「普通じゃね？」
普通だ。
「Hmmm…反応悪ぃなァオイ。」
観客席からも普通という言葉が聞こえてくる。
「確かに、徒競走=Basic！皆大好きアボカドみてェなつまらなさだが……」
アメリカではスラング英語で、つまらないをアボカドと表現することがあるらしい。
「ここは天下の雄英高校、ただの徒競走じゃあリスナー達が退屈しちまう。」
「……」
「てなわけで！個性使用アリの1kmガチンコ勝負にしようと思うのよ！」
観客席が沸いた。
周りのクラスメイトも喜んでいる姿を見せているようだが、俺は暗めのオーラを漂わせる普通科の方が気になる。
ヒーロー科への恨み節が聞こえてきた。
そんな中でもただ1人、綺麗な顔で凛と立つ彼女に意識を向けてみる。
本当に綺麗だ。不思議なくらい。
その綺麗さは一体どこから湧いて来るんだろうか。
「レーンはこのスタジアムを1周＋最後のストレートコースだ！白線なんて無ェから、個性使いまくって1位を目指せ！」
「やっべ、ちょっと興奮してきた……」
「は？私超不利なんですけど？」
俺も脚力が強い動物の肉を食べてきたから有利には有利だ。大勢に見られながら個性を発動させられるかは別として。
この競技はスタジアムの狭い通路から外に出て外周を走り、途中から外周を逸れてスタートの狭い通路までのストレートコースを走り戻ってくるという内容の、至って単純なものだ。
しかしそう簡単にいかないのが雄英というものである。
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作者名：雪羅 | 作成日時：2021年10月24日 22時
