＊ ページ9
.
『もう、そんなに拗ねないで』
「別に拗ねてねぇ」
猫っ毛な冴の髪の毛が雪の太腿をくすぐる。ソファーに座る雪の膝に頭を乗せて横になる冴に、雪は、冴を見下ろす、ということに少し新鮮感を覚える。如何にも不満という顔をしながら、そう言うものだから、雪は苦笑する。
しかし、ここまでわかりやすくなるのは珍しいと雪は思いながら、小豆色の頭を撫でる。今日はオフなため冴の前髪は下ろされていた。そんな冴に雪は可愛いと胸を締め付けられながら、今度は頬を撫でる。保湿されているその頬はとても綺麗で、女である雪ですら羨ましくなるほどだった。
『もう長電話はしないから』
「そうじゃねぇ」
呆れた様な表情を見せる冴に、雪は首輪をかしげる。構うことができなかったから、目の前の恋人は拗ねているのでないのか？と雪はがなぜ冴が不機嫌なのかが分からなくなった。しかし、彼が教えてくれるはずもなく、ただただ雪と目を合わせているだけ。
『言ってくれなきゃ分からないよ』
眉を寄せて困ったように、そして少し悲しそうな表情を見せる雪。そんな雪に冴は嫌そうな顔をする、それは冴が雪のその表情に弱かったからだ。ゆらゆらと揺れる雪の瞳に、冴はため息を一つこぼしてから口を開いた。
「男と話してるのが気に入らないだけだ」
『……そ、れは』
つまり……。
雪はゆっくりと冴の言葉を咀嚼する。彼が自分から視線を逸らすその瞬間まで、雪は冴の意味を考える。そして、冴が顔を横に向けたと同時に、雪は彼の言葉の意味と、彼がどうして不機嫌なのかを理解した。その途端、雪は自分の口角が上がってゆくのがわかる。
『嫉妬した？』
「うるせえ」
弾んだ雪の声に冴はそう言う。冴には彼女の顔を見なくても、彼女が自分の心理を理解して笑みを浮かべていることがわかったいた。その証拠に、彼女からの視線がうざったい。冴は睨むように雪を見上げれば、彼女はニンマリとした笑顔で冴を見つめる。そんな彼女に舌打ちを一つこぼした。
『冴かわいい』
楽しんでいるのだろう。細められた勿忘草色には、顔を少し赤く染めた冴が映っていた。普段ならこんな姿など雪には見せない冴だったが、彼女があまりにも楽しそうに他の男と話すのだ。冴は焦ってしまい、いつもは見せない表情がつい出てしまった。しかし、そんなことなど知らない雪は冴の頭を撫でていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うつ(プロフ) - レンヤさん» コメントありがとうございます！レンヤ様のオメガバースを好きになるきっかけになることができてよかったです🫶🏻楽しみにして頂いてありがとうございます🙇🏼♀️💕応援してくださってとても嬉しいです☺️ (2023年4月21日 13時) (
レス) @page8 id: c201149121 (このIDを非表示/違反報告)
レンヤ(プロフ) - 初めましてコメント失礼致します。作者様の前作にオメガバース作品の良さを教えて頂きました✨ 続編を作られていてこれからの続きが凄く楽しみです！かげながら応援しております！！ (2023年4月21日 8時) (レス) id: 315830c04e (このIDを非表示/違反報告)
うつ(プロフ) - 砂時計さん» コメントありがとうございます。続編も読んでくださりありがとうございます、！ドロドロ甘々なお話を目指しているのでそう言って頂けてと手も嬉しいです😿♡これからも二人のドロドロイチャイチャ生活を見守っていただけると幸いです💕 (2023年4月10日 11時) (レス) id: c201149121 (このIDを非表示/違反報告)
うつ(プロフ) - 真昼さん» そう言って頂けてとても嬉しです、！不定期更新ですが、気長にお待ちください🫶 (2023年4月10日 11時) (レス) id: c201149121 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - コメント失礼します。続編、おめでとうございますっ、また、お二人のお話を読むことが出来てとても幸せです😭♡ 作者様の仄暗さと甘ったるさの詰まった感情描写がとても美しくて好きです。これからも作者様のペースで更新のほど頑張ってください！！ (2023年4月1日 9時) (レス) id: 9f48da2d13 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うつ | 作成日時：2023年3月20日 9時
