いらない。６【牛島若利】

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バスから帰ってきて、ミーティングを軽くする。何がいけないのかなどの反省を行う。



「3年は、後春高がある。だが、ここで引退してもいい者は引退しても構わない」



そう言った監督。引退しにくいんじゃないかと思われたけど、レギュラーやベンチ入りすらしていない3年生はほとんど辞めて行ってしまった。

残されたのは、レギュラーとベンチ、そしてマネージャーの私を含めた7人のみだった。

他の人も理解していたのかもしれない。もう、後輩に場を譲るべきなのだと。

一生懸命に頑張ってきたのに、ここで線を引いてしまって、悔しくはないのだろうか。



「A」


「若利君」


「そんなところにいては風邪をひくぞ」


「あはは、ありがとう。全然大丈夫だよ」



夏真っ盛りとはいえ、夜は風が涼しい。山のてっぺんにある白鳥沢高校には、いつも新しい風が入ってくる。



「……進路のこととか、いろいろ考えなきゃいけないな」


「そうだな」


「若利君は、大学の推薦いっぱい来ているでしょ？」


「Aが行く大学にいくぞ？」



なんでそんな当然みたいな反応をするんだこの子は。



「私は……なにかしたいことがあるのかな」


「自分で分からないのか」


「うん、将来の夢とかないし……こっちに来たのは、中学の先生の推薦でせっかくだからって感じだったんだよね」



今思えば、中学の先生には感謝しかないな。若利君たちに会えたし。

推薦なんてされなければ、高校なんてどこへでもよかった。



「Aは、」


「？」


「……いや、何でもない。そろそろ戻ろう」


「うん」



何を言おうとしていたかは聞かない。

きっと彼も私もそんなことを忘れてしまうくらいいろんなお話をするのだから。

もう、春高に向かって準備をしないといけないな。もちろん、進路も考えながら。

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