たわいもない会話。 ページ14
「……ここまでくればいいかな」
「さ、さくさく、腕離して……」
「あっ、ごめん」
腕を握っているの忘れていた。
パッと離すとAは顔を真っ赤にして腕を引っ込める。
え、なんで顔赤いんだ？
「び、びっくりしたよ！ 突然腕引っ張るなんて……まぁ、さくさくらしいけど！」
へへ、と照れ隠しをするように笑うA。
「あっ、好きな人にはそうやって乱暴に腕引っ張っちゃだめだよ？」
「……悪い」
「さくさくが謝るってことは、天変地異でも起きるのかな？」
「むかつく」
「腕掴んだ仕返し！」
ししし、と笑うAの耳はまだ真っ赤だ。
「このあと、どうするの？会場出ちゃったけど……」
「……家帰る」
「そうだね、私もそうしようかな。電車一緒だよね。帰ろ！」
二人で並んで歩いて帰る。電車も幸い混むギリギリ手前くらいだった。
狭い電車を乗り継ぎ、最寄りの駅に着く。
「うちらもそろそろ引継ぎがあるなぁ」
「あぁ……でも、部長は変わらないだろ」
「うん。まさかの2年から声がでかいからって理由で部長になると思わなかったよ」
お前が部長になったのは、それだけじゃない気がするけどな。
「さくさくは誰が主将になるの？さくさく？」
「まさか。古森じゃないの」
「リベロは主将できないんでしょ？ あぁでも主将と部長は違うか……？
うーん、私はさくさくだと思うけどな」
「人を束ねるのに向いていない」
「自分で言う？確かにそうだけど」
試合も一通り終わったので、Aはしばらく部活がない。
それはもちろん、俺たちもそうだ。
「次って新人戦じゃない？」
「あぁ……そうだな」
「それじゃあ、そっちの方に気合入れないとね」
このままたわいもない話で解散するのか。誤解をそのままにしていいのか。
「……A」
「！」
俺は、自分でうまく伝えられるか分からないけど、Aを止めた。
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