純 情 恋 愛 。【澤村大地】

遅刻 ページ1

「こらー！廊下を走るな！」


「すみません！」



廊下を早歩きしている場合ではない。

一刻も早く、待ち合わせ場所に向かうために、先生に怒られながらも走る。



「あ、キャプテンだ！」


「日向、影山！また部活でな！」


「はい……澤村さん、あんなに慌ててどうしたんだろうな」


「さあ？」



後輩に挨拶もろくにできず、階段を駆け下りていく。

行かなければ。彼女の待っている中庭に。



靴を急いで履き替え、細い通路を曲がる。

木漏れ日の入る中庭に一人、長い黒髪の一言で例えるなら清楚。

凛として咲く花に負けないくらい綺麗な女性が、見ていた花から目をそらし、時計を見た後俺のほうをゆっくりと向いた。



「……澤村君、2分25秒の遅刻です」


「すまない！橋本先生に捕まって……」



橋本先生は、進路の先生だ。

今日の放課後に進路相談をするというのに、なぜか放課後に来て話を軽く聞くつもりが、思った以上に時間がかかってしまったのだ。

言い訳が彼女に通じるわけないか、と思っていると小さなため息が聞こえた。



「なら、仕方ありません。では水を汲みましょう」



顔色一つ変えずに、じょうろを外の水道に持っていく彼女。

怒っているのかいないのか分からないが、こういうミステリアスな部分に俺はひかれたのかもしれない。

そうそう、言いそびれていたが彼女は立木A。

俺と同じ3年で、美化委員長。

そして、俺の彼女でもある。

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