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バスに戻って、私は窓側の席に座った。その横に若利君が座る。
「あはは、真っ先に取りに来たね」
「当たり前だろう。こうして、一緒にバスに乗るのも最後だからな」
「あ……」
そっか、もうこのバスには私たちは乗らないんだ……。
バレー部として、白鳥沢学園として、もう。
「寂しいね」
「そうだな」
バスが発車すると、皆は一言もしゃべらなかった。
窓の外を見つめる者、疲労で寝てしまう者……。
私は、遠くなっていく仙台市体育館を見つめていた。
若利君は、本を読んでいる。
「……A」
「ん?」
「泣いているのか?」
「……うん」
自然に、涙が零れ落ちる。
もう、皆と一緒に戦えない。
全国の舞台に、行けると思っていた。
でも想像以上に烏野高校は強かった。
悔しい。全力を尽くしたはずなのに。
「こっちに寄りかかれ」
「……うん」
若利君は肩を寄せて、私は若利君の方に寄りかかった。
その間も静かに涙は零れ落ちる。
鼻水すすっちゃったら、泣いているのばれちゃうな。
「若利君、私悔しいよ」
「俺もだ」
目を閉じても止まらない。
白鳥沢学園に着くまで、どうか、泣き止んでいますように。
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