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二人のことを考えないように夜までびっちり入っていた仕事に没頭した。マンションの前で車を降りゆっくり息を吐く。
もう0時を回っている。
外の明かりが漏れ入るだけの暗いリビングに入り、鞄を置いて光くんが眠っているソファーベッドに近付いた。窓がカタカタとなっている。
光くんの寝顔を見下ろす。布団が半分ずり落ちている。ゆっくり膝をつくと、スースーと寝息が聞こえた。
そっと頬に手のひらを当て、親指で下唇をふにふにと押す。光くんの柔らかい唇の感触にお腹の辺りが疼く。
二人の微笑み合う姿を思い出し、薮くんもその感触を知っていることに苛立つが、オレの知らない光くんを全て知っているのに今さら馬鹿だなと一人嗤ってしまう。
しっかりと床に膝を着いているはずなのに、体がフワフワと安定しない。
漸くそれは嫉妬なのだと理解する。ずっと光くんは薮くんのものだと思っていたから。オレが邪魔者だと思っていたから。
でも、今は…光くんへの独占欲で胸が苦しい。
光くんの上にゆっくりと跨がり、額から後ろへ髪をかき上げるように何度か撫でた。
長い睫毛がふるふると震え、静かに光くんの瞼が上がる。しばらく焦点が定まらず、ぼーっと俺を見ていたが、急に全てを認識したのだろう、目を見開いた。
薄暗い部屋で光くんの瞳だけが黒く光る。
「ゆうと…?」
「……なんでだよ。」
何も変わっていなかったんだ。結局はオレの片想いで独りよがり…。
オレは光くんの頬を両手で包むと、そのまま唇を押し付けた。口を閉じる間も与えずに光くんの口内へ侵入し、驚きで動けないその舌を捕まえる。
「はっ…。」
耳たぶから首筋を這うように舐めると、光くんが甘い息を吐いた。片手で服の裾をたくしあげて初めて触れる熱っぽい肌を荒々しく撫でると、甘く吐く息に合わせて光くんの胸が上下する。
静かに光くんの大きな手のひらがオレの頬に触れる。
「ゆ…と、どした?」
優しい声。
「…なんで抵抗しないの?嫌だって突き飛ばせばいいのに。」
「…こんな泣きそうな顔したやつ、突き飛ばせるかよ。」
オレの頬を撫でながら困ったように微笑む。
好きなんだ。光くんの唇も指先も髪の毛一本まで他の誰にも触らせたくない。
子供の駄々みたいな本音。
抱き寄せられ頭を優しく撫でられると、徐々に気持ちが癒されていく。
恥ずかしくなって、頭冷してくる、とその場を離れ風呂へ向かった。
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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時