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yt side
薮くんと光くんが出て行くのを目で追う。
「追いかけなくていいの?」
大ちゃんが出て行く二人に遣っていた目線を俺に移して言う。
「うん…。」
ふーん、と大ちゃんはソファに座って、オレンジジュースを飲み始めた。
「やっぱりオレンジだよなー。」
くぅーうまい!っと大ちゃんは大袈裟に言う。
「オレは、りんごも好きだけど…?」
「ふっ、裕翔はお子様だからな。」
わざとらしく茶化してくる。
「いやいや、オレンジジュースも十分お子様だから!あと、大ちゃんがオレンジ派とか誰も知らないからね!」
オレは思わず、ぶはっと声を出して笑いながら言う。
大ちゃんは子供みたいってよく言われるけど、やっぱりオレよりずっと大人だ。
「おはよー!」
「はよー!」
少しずつメンバーが集まってきた。
少し遅れて薮くんも戻ってきたが、その後ろに光くんの姿はなかった。
でも、薮くんが大ちゃんのところに行って、何か耳打ちすると、大ちゃんは眉を下げて頭を掻きながら楽屋を出ていった。
薮くんはそのまま俺のところへ真っ直ぐ向かって来て目の前で止まった。表情からは薮くんの感情は読み取れない。
突然、薮くんが頭の前で手を合わせる。
「さっきはすまん!」
「えっ!? や、止めてよ!」
殴られるくらいの覚悟だったから、まさか謝られるとは思わなかった。
「ん、でも暴力はな…。」
と言いながら、薮くんは近くの壁に寄りかかって腕を組んだ。俺は薮くんの横に並ぶように立った。二人で前を向いたまま無言が続いた。
俺は周りを見渡して、みんな各々話をしたり、音楽を聞いたりしているのを確認した。それからゆっくり息を吸って吐き出すように言う。
「……オレ、ひかるくんが好き…。」
「…あぁ。」
ちょうど大ちゃんと光くんが戻ってきた。思わず光くんを目で追う。きっと今、薮くんも光くんを見てる。
「俺、最年長なのに余裕なくてかっこわりぃな。」
薮くんが続ける。
「このままひかるを裕翔のところには置いておけない。カッコ悪くてもひかるは絶対離さない。」
「…うん。でも、オレももう諦められないから。」
また二人で正面を向いたまま無言が続く。
「移動おねがいしまーす!」
スタッフさんの声が響く。
「行くか。」
前を行く薮くんの後ろ姿をみながら、オレも歩き出した。
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作者名:黄色の梅 | 作成日時:2019年11月19日 11時