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「帰る前に電話したのに圏外だから心配したじゃん」
「あぁ？ どうせ充電切れてんだろ。必要ねーからね。携帯なんて」
「また充電切れ？」
サイドボードに放置されたままの携帯。
彼の髪色と同じシルバーのガラケーを開くと、
案の定、液晶はブラックアウトしたままだった。
＊＊＊
「そうそう、今日後輩の男の子がさ」
退屈そうにあくびを連発する彼の姿を
脱ぎかけのシャツの隙間からとらえる。
孤独の殻に閉じこもるのを自ら望んでいるように見え、
実はそうじゃない。
この数ヶ月、生活を共にしてわかった彼のミステリアスな生態の一端だった。
どうせヘソを曲げてるだけ。
そう睨んだわたしはソファに這い上がると
「ねぇ、」
仏頂面を決め込む彼にそろりとすり寄った。
ところが伸ばした腕が触れた瞬間、
鋭い目つきとともに払い除けられて。
「男の話なんかしながら酒くせぇ体で近づけんな」
「だって飲んできたんだもん。仕方な……」
「そうやって誰にでもへらへらして媚売ってんだろ？ このクソ女が」
言葉を遮るように首元に剥けられた歯がギリと鈍い音を立てる。
次いで手はわたしと下着へ。
手荒に剥ぐのは、彼の欲望のスイッチが入っ
た証拠だった。
押し倒され反転する体、
天地がひっくり返るとアルコールで火照った
裸体はたちまち彼のおもちゃと化した。
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作者名：知夏
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/972e809caf1/
作成日時：2016年3月18日 23時
