＋isolation ページ40
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ダイニングチェアに腰かける。
銀紙に乗せた粉を扱う指は震えていた。
このころにもなれば脳と筋肉の動きは全くリ
ンクしない。
反社会的人間ニ幸せハコナイ
反社会的人間ハ幸せニハナレナイ
反社会的人間ニ居場所ナンテナイ
反社会的人間ニ……
反社会的人間ニ……
念仏のように独り言を唱えていると、
それに応えるかのように夜風がベランダのカ
ーテンをゆらりと揺らした。
ねぇ、蝉…そこで見てるんでしょ？
ごめんね。こんな姿で。
今ね、あんたとのこの一年を思い出してた。
なんか幸せだったな、って。
え、顔がにやけてるって？
ふふ。だってわたし大好きだったんだもん。
貴方のこと。
ねぇ、涼介…
わたしたちはやっぱり幸せになっちゃいけな
い人間だったんだね。
だから涼介は先に逝ったんでしょ？
罪人の烙印を消し去り幸せに暮らすことが許
されるーーーー
ユメノクニに＿＿＿＿
…
キィィィィィィン…
薄れゆく意識の中、
カーテン越しに手を差し伸べる彼が見えた。
" おいで "
白い頬を緩ませ
優しく誘う彼が恋しくて
ガタンッ
立ち上がったわたしは
そのまま……
迷いなく足を出した。
…
わたしの記憶はここで途切れることになる。
耳障りなモスキート音と
心臓の鼓動とともにーーーー
＊＊＊＊
七時になりました。
ニュースをお伝えします。
昨夜未明、
東京渋谷区のアパートの一室で錯乱状態に陥った二十代前半と見られる女が誤ってベランダから転落、警察の調べでは……
＊＊＊＊
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作者名：知夏
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/972e809caf1/
作成日時：2016年3月18日 23時
